(3)道路政策の進め方の改革
イ 道路政策の進め方の改革
1) 道路事業の効率化
限られた財源の中で、投資効果を最大化するため、投資効果の早期発現を目指した投資の重点化、事業コストの縮減、多様な連携施策を推進する。
イ)重点投資を行う分野の明確化
日本の社会、経済、生活が直面する課題解決を支援するため、以下の緊急課題に対応し、道路事業の重点投資分野を明確にして道路政策を推進する。
・新たな経済構造実現に向けた支援
・活力ある地域づくり、都市づくりの支援
・よりよい生活環境の確保
・安心して住める国土の実現
ロ)投資効果の早期発現を目指した投資の重点化
厳しい財政制約の下、投資効果の早期発現を目指すため、費用便益比を含む指標を用いた評価を行い、新規に着手する箇所を厳選する。また、新規事業について大規模な箇所において着工準備制度を活用することにより供用までの事業期間の短縮を図るとともに、継続事業について用地取得の目途が立ち早期供用が可能な箇所に投資の重点化を図る。
(参考)地方道補助事業等の箇所数と1ヶ所当たりの事業費の推移(H12/H7)
・箇所数 |
0.54 |
・1 ヶ所当たり事業費 |
1.49 |
ハ)事業コストの縮減策の推進
平成9年度に策定された「公共工事コスト縮減に関する行動計画」に基づき、平成11年度までに技術基準等の見直し、新技術の活用、設計VE等の各種施策を実施し、平成11年度は国の直轄事業(道路関係)において約10%のコスト縮減を達成した(行動計画のベースとなる平成8年度比)。平成12年度には効果的な事業コスト縮減に向けて、以下の構造的対策を強化する。
・橋梁等の技術基準の性能規定化やデザインビルド方式の発注を導入し、新技術の積極活用によるコスト縮減を推進
・ライフサイクルコストの縮減に向け、より耐久性を重視する技術基準を導入
・従来の取組みで効果があった設計・施工法の標準化や、構造物の規格化による施工設備の共通化を推進
ニ)多様な連携施策の推進
横断的な政策テーマについては、他省庁や地方公共団体、民間等の様々な施策・事業とのより一層積極的な連携を推進し、事業効果の最大化を図る。
主要な連携施策 ( )内は連携省庁名
1)総合的な物流対策の推進(通産省、運輸省 他)
2)広域交通基盤連携強化計画の策定等(運輸省、国土庁)
3)中心市街地の活性化(通産省、自治省 他)
4)ITSの推進(警察庁、通産省、運輸省、郵政省)
5)都市圏交通円滑化総合対策(警察庁)
6)踏切道等総合対策(運輸省)
7)電線類地中化の推進(警察庁、通産省、郵政省、自治省)
8)地域戦略プランの推進に対する積極的支援、地域連携総合支援事業(国土庁 他)
9)「地域道路整備計画」の策定(農水省、林野庁)
10)事故多発地点緊急対策事業(警察庁 他)
11)バリアフリーの歩行空間整備(厚生省、運輸省、警察庁)
12)道路交通騒音、大気汚染等沿道環境対策(警察庁、環境庁、通産省、運輸省)
13)治山事業と連携した道路上部斜面の落石対策(林野庁)
14)GISの整備(国土庁 他)
2) 評価システムの導入
道路政策の効率性、透明性の一層の向上を図るため、国民のニーズの把握と的確な対応、効率的かつ効果的な施策展開と事業執行を可能とする評価システムの構築、導入を進めている。
イ)国民ニーズ把握の取組み
国民からの意見、相談等の円滑な把握及び速やかな対応を実現し、行政サービスの向上を図るとともに、把握・蓄積した国民のニーズ等を的確に道路行政に反映する仕組みの充実を図るため、複数の道路管理者が連携し、電話(フリーダイヤル)やインターネット等を通じて、道路に関するあらゆる意見や相談等を一元的に受け付け、対応する常設の窓口である「道の相談室」を設置する。平成10年度に東京23区と高知県で試行を行い、平成11年度には、東京都、四国四県、新潟県、東北六県、福岡市、沖縄県、山口県でサービスを開始したところであり、今後、全国へのサービスの展開を図る。
また、民間企業等で実績のある顧客満足度を把握するためにアンケート等により行われるCS調査について、道路行政に本格的に導入し、行政サービスの改善や施策の立案への活用を図る。
ロ)事業評価
平成9年度予算より、費用便益比(B/C)を含む客観的評価指標(案)を用いて新規事業採択時の評価の試行を開始した。平成11年度予算より、建設省所管公共事業の再評価及び新規採択時評価の実施要領(平成10年3月策定)に基づき、新規事業採択時の評価を本格的に実施するほか、事業採択後5年間未着工である事業及び10年間継続中である事業等の再評価を行い、継続、休止、中止等の方針を決定する再評価システムを導入したところである。
引き続き、新規事業採択時の評価及び事業途中段階の再評価を実施するとともに、それら評価の実績や国民の意見等を踏まえ、費用便益分析手法や評価指標の改善に向けた検討を行う。
また、事業完了後における事後評価に関しては、平成11年度より、平成11年8月に策定された建設省所管公共事業の事後評価基本方針(案)に従い、一部事業を対象として評価の試行を実施したところであり、今後は、試行結果を踏まえて評価手法の確立、実施範囲の拡大を図る。
なお、道路整備への理解を深めるとともに、その効果を広く周知するため、「道路整備効果事例」や「TDM事例」「日本の道路」等の紹介を国土交通省道路局のホームページ(
http://www.mlit.go.jp/road/)にて行っている。
ハ)施策の評価
道路関係の施策が社会・経済や生活に与える効果について、アウトカム指標(
注)等を用いて目標を定め、実際の効果を計測し、施策展開の改善や国民へのわかりやすい情報提供を行う「施策の評価」の導入について検討している。
平成10年度から渋滞対策や地域連携、交通安全対策等の施策について、旅行速度や都市間の時間距離などの指標による評価を試みており、さらに手法の確立、実用化に向けて検討を進める。
また、平成12年度には、施策の評価手法を活用し、新道路整備五箇年計画の中間評価を実施する。
ニ)社会実験の推進
社会的に大きな影響を与える可能性が高い新しい施策の導入にあたり、地域協力を得ながら、社会実験(場所や期間を限定して施策を試行するとともに、試行結果の評価を行い、施策を本格的に実施するか否かの判断材料を得ること。)を積極的に実施し、施策効果の把握や地域住民等の合意形成を図る。
3) 透明性の確保、パブリック・インボルブメント(PI)の実施
国民ニーズへのより的確な対応及び円滑な道路政策の実現に向け、施策の立案や事業の計画・実施等の過程で、関係する住民や国民一般に情報を公開した上で、広く意見を聴取し、それらに反映する方式(パブリック・インボルブメント)の一層の導入を図る。
平成12年度は、「パブリック・インボルブメント(PI)実施指針」(仮称)を作成し、広域的な幹線道路の計画過程で幅広くPIを実施することとしている。
また、新たな施策の導入等に際し事前に案を示して積極的に国民からの意見を求めるパブリックコメントの仕組みの積極的な活用を図る。
4) パートナーシップの確立
道路行政に関係する各種機関や国民等との相互理解を深め、円滑かつ効果的・効率的に施策を実施するため、相互に適切に役割分担した新しいパートナーシップを構築する。
イ)国民と行政の役割分担
パブリック・インボルブメントの実施に加え、生活に密着した地域的な道路について、住民と行政が連携・分担して管理が行われる仕組みを検討し、具体化を図る。
ロ)官と民の役割分担
民間の資金、技術力、経営のノウハウといった民間活力の一層の活用を図るため、PFI法の基本方針に従い、道路事業に係る実施方針を定めるための調査・検討を行う。
ハ)国と地方の役割分担
地方分権推進計画に基づき、地方分権を進める一方で国と地方の権限と責任を明確化し効率的な行政運営を実現するため、国の直轄管理区間の客観的基準による範囲の見直し、補助金の整理合理化の推進等に取り組むこととしている。
ロ 新技術の開発と活用、国際協力の推進
1) 新道路技術五箇年計画に基づく技術開発
平成10年度に策定した「新道路技術五箇年計画」に基づく技術開発を効率的・効果的に推進するため、公募型委託研究を積極的に実施するとともに、新道路技術五箇年計画の中間評価を実施する。
イ)公募型委託研究の積極的な実施
民間や大学等から技術開発の提案を募り、委託により研究を実施する公募型委託研究を積極的に実施していく。
ロ)中間評価の実施
新道路技術五箇年計画(平成10〜14年度)の中間年度にあたる平成12年度に、研究開発の妥当性及び執行状況を評価の視点として中間評価を実施する。
2) 国際協力の推進
OECD/RTR(経済協力開発機構/道路交通計画研究)、APEC(アジア太平洋経済協力会議)及びPIARC(世界道路協会)における共同研究を推進する。また、英国・米国・中国・韓国・仏国との間で道路技術ワークショップ、セミナー等を開催する。
さらに、国際インフラ整備支援調査により、中央アジア地域を対象にした道路整備のためのマスタープランの策定を支援する。
ハ 新たな道路構造基準の策定
平成6年11月の道路審議会答申「21世紀に向けた新たな道路構造のあり方─新時代の“道の姿”をもとめて─」を受け、これまでの「自動車空間」を中心とした道路構造から、「歩行者空間」「自転車空間」「自動車空間」「緑空間」等の多様な構成要素を地域の状況に応じて組み合わせることにより構成するモジュール型の道路構造への転換を目指し、道路構造基準の見直しを実施している。
この一環として、平成11年9月には「歩道における段差及び勾配等に関する基準」を策定し、高齢者や身体障害者等誰もが利用しやすい歩道の構造を規定した。本基準のポイントは以下のとおりである。
1)連続した歩行空間ネットワークを確保するために、歩道内においては原則として1m以上の平坦部を連続して確保することとした。
2)歩道内における勾配は、車椅子利用者が通行可能となるよう、進行方向に5%以下、横断方向に2%を標準とした。
3)歩道から横断歩道への連続部等において、車いすが通行可能であり、かつ、視覚障害者が歩車道の境界を確認できるよう、歩車道境界の段差は2cmを標準とした。
これにより、沿道への車両の乗入れによる、いわゆる「波打ち歩道」を解消するよう、原則としてフラット型又はセミフラット型(歩道面の高さ5cm程度)の歩道形式の整備を推進することとしている。
(注)アウトカム指標:「道路の整備量」などの指標(アウトプット指標)に対し、「平均旅行速度」や「交通事故死者数」などの道路整備により社会的にどのような効果があったかを示す指標。