(7)危機管理体制の拡充

イ 水防体制の拡充
 近年、水防の重要性が再認識され、改めて水防体制の強化充実が求められる中で、水防思想の普及及び高揚を図り、水害の未然防止又は軽減に資するため、水防月間を定め、各種の行事等を実施しているところである。平成12年度においても、この水防月間内に水防演習や水防技術講習会等を実施する他、観測通信施設や水防資機材の開発・整備を行う等、多方面から水防体制の拡充を図る。
ロ 洪水ハザードマップ等の公表の推進
 洪水時の地域住民の迅速な警戒避難等に資するため、市町村が主体となって、避難地、避難路の位置、避難の心得等を具体的に示した洪水ハザードマップの作成・公表を行っており、平成11年度末において74市町村で整備されている。また、後述の「レッドページ」にも4市町が掲載された。今後は、複数の市区町村が相互に連携して避難計画等の検討を行う広域ハザードマップの作成を推進するとともに、補助河川の流域においても作成を推進する。また、洪水ハザードマップが十分活用されるよう、建設省河川局ホームページの「洪水・氾濫情報の所在地情報」に入手方法等を掲載しているところであり、今後もさらなる拡充を図る。
 さらに、土砂災害対策の一貫として、人命保護の立場から、土砂災害予警報システムの構築、土砂災害危険区域図の作成・公表を推進する。
 ○ 電話帳(ハローページ)へのレッドページ掲載
 ハザードマップ等の防災情報の公開、提供が積極的に進められている。そこで、内閣安全保障・危機管理室をはじめとした国の機関と、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)が協力し、多くの家庭に常備されている電話帳(ハローページ)の冒頭部分に、地域の実情に合わせた防災情報を記載した赤枠ページ「レッドページ」を、掲載できることになった。建設省としても、地方公共団体の求めに応じ、このような掲載について、必要な情報提供や技術的助言等の積極的な支援を行うこととしている。
ハ 危機管理トレーニングの推進
 地震、水害、土砂災害等が発生した際に迅速かつ的確な対応をとるために、国、県、市町村等の関係機関では、初動体制の強化、対応マニュアル等の整備を進めてきたところである。災害発生時に、パニックに陥らずに体制が適切に組織され、関係機関と連携を含めた対応が円滑になされるためには、役割・行動の確認を主目的とする従来型の防災訓練でなく、その場その場で個人が思考しつつ、関係機関と連携して臨機応変に判断する能力を養う実戦的なトレーニングを効果的に行うことが必要不可欠である。
 このため、地震・水害・土砂災害などに対する防災体制のより一層の向上を目的として、各種災害状況を綿密かつ具体的に再現し各防災担当者が実際の災害対応時に極めて近い状況を体験できる危機管理トレーニングの開発・実施を推進している。このような実戦的なトレーニングにより、災害状況が進展する中での不測の事態に際しての迅速かつ的確な判断・対応等の能力の向上を図られる。
 平成11年度は、建設大学校における建設企画III科研修において、建設省及び都道府県職員を対象に同トレーニングを実施した(平成11年12月)。また、市町村等の防災担当者を対象とした「危機管理研修」において同トレーニングを実施した(平成12年1月)ところである。
 平成12年度も、建設大学校における研修や「危機管理研修」を引き続き行うとともに、トレーニング内容のさらなる高度化を図っていく方針である。
ニ 防災ボランティアの活用
1) 防災エキスパート
 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機に、災害時におけるボランティアの果たす役割の重要性が認識された。建設省においても、公共土木施設等の被害情報の迅速な収集等をボランティアとして行う「防災エキスパート制度」を平成8年1月に発足させ、これまでに全地方建設局、北海道開発局、沖縄総合事務局において約4,900名の方々が防災エキスパートとして登録されている。地方公共団体においても、東京都、三重県、兵庫県、山口県、徳島県、高知県、福岡県、長崎県において制度が発足している。
2) 砂防ボランティア
 土砂災害に関する知識の普及、土砂災害発生に関連する斜面の亀裂などの変状の発見及び行政等への連絡、被災者の救助活動等を行う「砂防ボランティア」が、同じく阪神・淡路大震災を契機に全国各地で設立され、平成9年6月には「砂防ボランティア全国連絡協議会」が発足されるなどその活動の一層の円滑化、活発化が推進されている。平成12年1月現在で61団体3,117名の方々が登録されている。さらに、砂防ボランティアのうち土砂災害に関して高度な知識及び経験を有する技術者1,037名を「斜面判定士」として登録し、災害時の点検、調査等を行うこととしている。
 平成11年度は、7月の梅雨前線による豪雨、8月の熱帯低気圧による豪雨、9月の台風16号豪雨災害等において、これらのボランティアの方々が出動し、施設の緊急点検や行政機関の情報連絡の支援等に大きな役割を果たしている。