(2)国際協調

イ 多国間によるインフラ整備課題への取組み
1) 地球地図整備構想の推進
 地球環境の現状と変動を把握するため、建設省は、地球規模の地理情報を整備する「地球地図」構想を平成4年度に提唱した。平成7年度には地球地図国際運営委員会(委員:国家地図作成機関の長など、事務局:国土地理院)を設置し、各国の協力を得ながら西暦2000年までにデータ整備の完了を目指している。このような動きに国連も関心を示し、平成9年6月の国連環境開発特別総会において、地球地図の必要性が総会採択文書に盛り込まれた。平成10年11月には、国連事務局からの推薦状とともに国連加盟国の地図作成機関は本構想への参加を要請されるに至っている。平成11年4月末現在、本構想への参加を表明した国・地域は77を数える。一方、技術開発としては、平成11年度から地球地図を利用した自然災害による被害軽減を目指した利用技術の開発を進めている。
2) アジア太平洋地域建設担当閣僚会議
 平成7年9月に大阪で開催されたアジア太平洋地域のインフラ・都市・住宅整備担当の閣僚クラスによる「アジア太平洋地域建設担当閣僚会議」(16の国及び地域から閣僚等22名参加)を受けて、平成8年6月、東京で「第1回高級事務レベル会合(次官級会議)」を開催した。平成9年はチリのサンティアゴ、平成11年は香港において、高級事務レベル会合及び閣僚会議がそれぞれ開催された。
3) APEC(アジア太平洋経済協力)
 平成8年に開催されたフィリピンにおける第8回閣僚会議で、前年の大阪会合で策定された「行動指針」を具体化する「行動計画」を策定した。本計画では、先進国は2010年、開発途上国は2020年を目標に域内貿易自由化を達成するとしている。建設省では、経済インフラ、基準・適合性、政府調達、規制緩和等の分野で協議、協力を行っている(図2-XII-2)。
4) 国際建設フォーラム
 建設省は、在日の外国大使館の建設分野担当の参事官、書記官等と建設省、関係公団等との交流の場として「国際建設フォ-ラム International Forum on Infrastructure」を設置し、我が国から海外への情報発信に努めるとともに、情報交換を推進している。
5) 建設技術開発
 主要な先進国等との間では、政府レベルの二国間科学技術協力協定等に基づいて、土木研究所、建築研究所、国土地理院等の研究機関が中心となって、幅広い協力を行っている。さらに、科学技術分野にとどまらず、広く建設行政全般にわたる二国間の交流会議を、韓国とは河川及び水資源開発、都市開発、測地・地図、道路並びに住宅について、また、中国とは道路、河川及びダム、建築・住宅並びに都市について開催している。
ロ 建設市場のボーダーレス化への対応
1) サービスの貿易に関する一般協定
 1995年1月にWTO(世界貿易機関)が設立され、従来のモノの貿易に加えサービス貿易も対象範囲に加えることとなった。WTO協定の一部である「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS)は、建設業等150業種以上のサービス分野の貿易に影響を及ぼす政府の措置を対象としている。建設省所管のサービス分野(建設業等)では数量制限などの市場参入を制限する規制措置や内外差別的措置はとらないことを約束している。
 WTOにおいては、現在新たなサービス交渉及び政府調達協定改定交渉が行われており、今後とも適切に対応していく必要がある(図2-XII-3)。
2) 日米関係
 1997年のデンヴァー・サミットの際の日米首脳会談において、日米間の新たな経済パートナーシップのための枠組みの下での規制緩和及び競争政策に関する両政府の対話と努力を強化する「強化されたイニシアティブ」の開始が決定された。この目的を達成するため、電気通信、住宅、金融サービス、医療機器・医薬品等、6つの専門家会合が設けられており、このうち、住宅専門家会合においては、建築基準法の改正等を中心とした日本政府の規制緩和措置及び米国政府の規制緩和措置について双方向の議論が行われている。また、94年の「公共事業の入札・契約手続きの改善に関する行動計画」策定時の日米間の交換書簡に基づき、99年度末までレビュー会合を開催してきた。
3) 日・EU関係
 日・EUハイレベル協議や逐次開催されている専門家会合などの場において、建設分野に関する規制緩和施策等について意見交換を行っている。建築資材に関する日・EU相互承認協議は2000年6月の新建築基準法の全面施行後、再協議することになっている。
4) 経済協力開発機構(OECD)関係
 理事会の下、約30の委員会が設置されており、そのうち経済開発検討委員会(マクロ経済政策、構造問題等)、地域開発政策委員会(都市問題、地域開発問題)、国際投資・多国籍企業委員会(各国の投資受入れ問題、多国籍企業ガイドライン改訂)等16の委員会に関係しており、各委員会における交渉・協議、対日審査や道路交通計画研究等の共同協力研究などに職員の派遣を含め、対応を行っている。
5) 日韓関係
 平成5年3月の日韓首脳会談において日韓新経済パートナーシップ協議の設置が決定され、同年4月の第1回協議以降、毎回、建設省からも参加した。なお、同協議は第4回開催で中断している。現在は平成10年10月の金大中大統領訪日の際発表された「行動計画」を受けて「日韓ハイレベル経済協議」が設置されており、平成12年4月に開催された協議には建設省も参加している。
 また、両国の建設市場及び建設産業に係る制度・状況並びに国際協力の現状に関する情報を交換し、相互理解を促進するため、平成6年7月に第1回日韓建設経済交流会議が開催された。以後、毎年、日韓交互に交流会議を開催している。

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