2 平成11年度、12年度の主要施策

(1)国際協力

イ 規格・基準等の整備、民活による社会資本整備の支援
1) 建設産業の育成のためのノウハウの移転
 開発途上国等における建設産業の質的成長、育成強化及び社会資本の効率的整備を図るため、平成7年度より、我が国の持つ優れた品質管理、工程管理等のノウハウをマニュアル化し、このマニュアルを使用した現地セミナーを実施する「建設産業ノウハウ移転促進事業」を行っている。
2) 建設関係の規格・基準等の整備に対する支援
 我が国ODAの「量から質へ」の転換の一環として新たに規格・基準や基本制度といった知的分野に対する支援を開始しており、基準等の策定状況、重点的に支援すべき国・分野等に関する検討を行っている。平成12年度には、こうした取組みを一層強化することとしている(図2-XII-1)。
3) BOT方式等、民活による社会資本整備の支援
 近年、開発途上国を中心に、社会資本の充実が求められる一方で、政府において財源や技術者が不足していること等を背景として、BOT(Build-Operate-Transfer;建設・運営・移管)方式等の民活インフラ整備の円滑な推進について大きな関心が示されている。このため、建設省では平成7年度から、有識者、関係業界団体等の協力を得て、BOT方式によるインフラ整備の実態の把握、比較分析、ケーススタディ等の調査・検討を行ってきた。また、これらの結果を踏まえて、民間企業のBOT事業参加を促進する環境形成に資するため、「BOT事業における官民の役割分担に関するガイドライン」を作成するとともに、開発途上国における民活インフラ案件の発掘・形成への技術的支援等の施策を講じている。
ロ 援助対象の多様化
1) 援助対象地域の多様化
 平成11年度には、ヴェネズエラの土砂災害緊急対策などの短期専門家を30ヶ国に派遣した。また、建設技術援助のため23ヶ国へ長期専門家を派遣した。平成12年度も引き続き、中南米、アフリカ、中央アジア等に対する技術協力を積極的に実施する。
2) 様々な主体との連携
 開発途上国において民間援助団体(NGO)が行う建設分野の国際協力活動を支援するため、NGOが行う技術専門家の派遣や研修に対して助成を行っている。平成11年度は11ヶ国12件の技術専門家の派遣やNGO相互間で情報・意見交換を行うNGO交流シンポジウム等に対して助成を行った。
 また、開発途上国の現地社会への貢献度が高いシンボリックな事業を「建設業国際貢献推進事業」として支援している。平成11年度は、エジプトにおける教育文化施設整備事業等への支援を行った。
3) 国際災害緊急援助等
 海外で大規模な自然災害が発生した際に、当該国の要請に基づき、国際協力事業団を通じ、国際緊急援助隊へ専門家の派遣等の協力を行っている。平成11年度はトルコ及び台湾での地震災害に対して耐震診断専門家チーム派遣等の協力を行った。
4) 国境を越えた多国間大規模プロジェクトに対する協力
 地球規模のスーパー・プロジェクト(GSP:グローバル・スーパー・プロジェクト)は、環境への影響等に十分配慮しつつ実施されれば、世界に住む人々の生活向上や経済活性化に多大な効果をもたらすものとして、その推進の重要性は極めて高い。
 さらに、昨今の和平の進展により、地域間の交流や社会経済の発展を支える広域的な交通網や国際河川の総合開発といった国際インフラの整備ニーズが高まっている。そこで、建設省では、「アジアハイウェイ」、「メコン川流域開発」を対象に、我が国でのインフラ整備の経験を活かして、課題の整理、必要な情報、ノウハウの提供等を行い事業の推進を支援している。
5) 国際協力研究会の開催
 近年の開発途上国の諸情勢を反映し国際協力・交流の局面においても新たなテーマやニーズがさらに増えつつあるため、新たな角度からの検討を進め、さらに建設省の国際協力の総合的な強化を図ることを目指して、国際協力研究会を平成7年2月から開催し、幅広いテーマについて検討を行っている。
ハ 人づくり、技術移転の推進
1) 研修員の受入
 開発途上国からの要請に基づいた研修実施に協力している。研修の形態としては、国際協力事業団を通じたもの、マレイシアの東方政策(ルック・イースト)に係るもの、公益法人の依頼によるものがある。
 イ)国際協力事業団を通じたものについては、平成11年度は、集団型研修24コース276名、個別研修105件309名、合計585名を受け入れた。
 ロ)マレイシアの東方政策(ルック・イースト)施策を支援するため、平成11年度、土木、建築分野の産業技術研修生3名を受入れた。
 ハ)(財)建設産業教育センターでは、開発途上国の公的機関の要請に応え、建設現場で直接施工に携わる建設技能者や職長クラスの者に我が国の技能・技術を移転することを目的として、平成11年度は、中国等から215名の研修生を受け入れている。
2) 専門家の派遣
 開発途上国に技術協力等を行うため、各分野の専門家を長期(1年以上)又は短期(1年未満)に派遣するものであり、平成11年度の派遣実績は、国際協力事業団等を通じて長期122名、短期218名、合計340名となっており、また、この他に国際機関等への派遣は長期16名となっている。
3) プロジェクト方式技術協力
 開発途上国への技術移転をより効果的に進めるため、専門家派遣、研修員受入、機材供与を有機的に組み合せて国際協力事業団が行うものである。平成11年度の建設省関係では、タイ、ネパール、フィリピンにて新たに協力を開始した。
4) 海外建設技術移転指針の策定
 我が国の行う建設技術移転をさらに円滑かつ有効なものとし、また現地の条件により適合したものとするため、各種の技術分野別に派遣専門家等向けの「海外建設技術移転指針(マニュアル)」を取りまとめ、技術移転の促進を図っている。平成12年度は、平成11年度に策定を開始した4指針の取りまとめを行うとともに、「道路防災に係る技術移転指針」等の策定に着手する。
ニ 調査と技術開発
1) 国別基礎的調査の実施等
 開発途上国における経済基盤施設の整備状況、開発計画等を把握し、経済技術協力の可能性を探る経済基盤施設調査を、平成11年度は中国等4ヶ国について実施した。
 また、プロジェクトの発掘に先立ち、相手国のインフラ整備の現況と課題の調査を行い両国のインフラ整備政策担当者・学識経験者によるセミナー、政策対話を通してインフラ整備の現状と課題に関する共通の認識を深める国別インフラ整備・協力方針策定調査を、平成11年度はキューバ及びミャンマーについて実施した。
 さらに、政府はハイレベルな政策対話を行い総合的かつ中長期的観点より援助の重点分野等を策定するため、経済協力総合調査団を派遣しており、建設省は職員を調査団に派遣している。
2) プロジェクトファインディング
 開発途上国における優良な建設関係プロジェクトの発掘、形成を行うために、建設計画事前調査及び実現化推進事業等を実施している。
3) 調査団員の派遣
 開発途上国の各種公共的な開発計画に係るマスタープランの策定、経済上、技術上の実施可能性についての調査等のため、国際協力事業団を通じて、開発調査の事前調査団員、作業監理委員を派遣している。また、有償資金協力及び無償資金協力に関し、審査ミッション、基本設計調査等の実施に際して、専門家の派遣等積極的に対応している。平成11年度には、延べ105名を派遣した。
 また、インドネシア、フィリピン、スリランカ等に対する円借款政府調査団に参団した。
4) 海外建設技術開発事業
 開発途上国の自然的、社会的、経済的条件に適合し、当該国の技術水準に合致した建設技術の開発を行うものである。
 我が国の技術を基に開発途上国の自然的、社会的、経済的条件に適合した技術を開発しその普及を図るため、有効と思われる技術について、開発途上国におけるモデル的施工、有効性確認、紹介及び普及を行う「途上国建設技術開発促進事業」を行うとともに、平成11年度から国際地理情報システムを用いて、自然災害により被害を被る可能性の高い地域及び環境に配慮した水資源管理のための水循環量を把握する手法の技術開発を実施している。
5) 環境分野における国際協力の推進
 「建設計画事前調査」において、全ての事前調査案件について環境への配慮について検討することとしている。
6) 国際協力に係る建設技術開発・研究五箇年計画
 先進国及び開発途上国と協力して行う建設技術の開発・研究、我が国が行う開発途上国へ適用する建設技術の開発等に関する「建設技術五箇年計画・国際編」を策定し、実施している。
7) 国際的なインフラデータベースの構築
 建設省では、各国のインフラ整備状況、公共投資政策等の情報をもとに的確な国際協力を進めるため、国際的なインフラデータベースの構築を進めている。このデータベースは、平成7年から始まった「アジア太平洋地域建設担当閣僚会議」の20の参加国・地域の共同の成果として、建設経済、道路、都市、住宅の概況等の建設関連情報を収集、整理して構築したものであり、平成9年度からインターネットを介して広く情報提供を開始した。
 現在、同閣僚会議等での議論を踏まえ、データの追加、更新を行いつつデータベースの充実を図っている。
ホ 国際交流の推進
1) 要人招へい事業
 開発途上国の社会資本整備に携わる高級管理者に、関連する我が国の建設行政制度等を紹介する要人招へい事業として、平成11年度は、中華人民共和国建設部王天錫副司長等を招へいした。
2) 国際交流推進事業
 日中間の建設分野の交流促進、両国の建設技術向上等のため、日中建設交流事業を実施し、建設技術者等の派遣、受入れに助成している。
3) 建設アタッシェ(建設省出向者の在外公館への派遣)等
 現在25カ国、27の我が国在外公館に、建設省出向者が派遣されており、我が国の経済技術協力の円滑な実施等に貢献している。
4) 多国間協力
 国際連合のアジア太平洋経済社会委員会に対し、道路・建築について、また、国連開発計画に都市・地域計画の専門家を派遣している。
 また、建設省は、世界銀行、アジア開発銀行、経済開発協力機構(OECD)、アジア科学協力連合、常設国際道路会議協会、国際大ダム会議、国際水資源学会、国際住宅・都市計画連合、国際ニュータウン協会等の会議参加等により積極的にその活動を支援している。

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