I 経済情勢と建設活動の状況等

1 平成11年度の我が国経済

 我が国経済は、平成11年度当初は個人消費、設備投資といった民間需要の低迷などから極めて厳しい状況にあったが、その後、各種の政策効果などを受けて緩やかな改善を続け、年度末には自律的回復へ向けた動きも見られるようになった。
 その結果、平成11年度実質国内総生産は、前年度比0.5%増(一次速報値ベース)と3年振りのプラス成長となった。
 国内需要についてみると、個人消費は、雇用情勢の厳しさや賃金の伸び悩み等から足踏み状態で推移した。
 民間設備投資は、平成10年度以降、需要の低迷による企業収益の悪化や、設備過剰感の高まりから大幅に減少していたが、年度後半はIT関連投資などから下げ止まりつつあり、持ち直しの動きが広がっている。
 住宅投資は、住宅ローン控除制度の創設や住宅金融公庫融資の拡充などの政策効果から、持家住宅、分譲住宅が増加し、新設住宅着工戸数では、約123万戸と前年度(約118万戸)比で3年振りに増加した。
 国際収支面については、アジア経済の回復などから輸出、輸入数量とも概ね増加傾向で推移したが、輸入の伸びが大きく、貿易収支黒字は減少した。また、サービス収支は概ね横ばいで推移したことから、経常収支の黒字額は前年度比減少した。
 雇用情勢は厳しい状況が続いた。完全失業率は、平成11年度平均で4.7%と、昭和28年度以降で最も高い水準を3年連続で更新した。また、有効求人倍率も年度平均で、0.49倍と前年度から0.01ポイント低下した。
 金融面では、公定歩合は0.50%の史上最低水準が保たれ、短期市場については、平成11年2月からのいわゆるゼロ金利政策が維持された。
 物価は、国内需給の緩みや原油価格の低迷等から、国内卸売物価指数は平成10年度以降下落傾向で推移してきたが、平成11年度は国内在庫調整の進展や、原油価格の上昇などにより下落幅が縮小し、平成11年度平均で前年度比1.0%の低下となった。消費者物価指数は、同0.5%の低下となった。