(2)建設産業再生プログラム

 我が国経済が低迷する中で、大きな構造変化に直面している建設産業のあり方は、国民や市場の大きな関心事である。
 このため、平成11年7月に「建設産業再生プログラム」を策定し、企業の多様な選択を可能にする環境整備と競争性を重視した公正な市場環境の整備を行う方向性を示した。
 今後は、このプログラムに基づき、建設産業再生に向けた各企業の取組みを促進するような政策を推進する。

(建設産業再生プログラムより、IV企業戦略の方向、V行政による環境整備の課題の骨子)
IV 企業戦略の方向
1  「選択と集中」のための企業戦略
・各企業において、それぞれの得意分野に思い切った重点化を図り、経営の「選択と集中」を通じて「利益率の向上」を目指すことが必要
・特に、大手総合建設会社においては、単なる規模縮小のリストラではなく、競争力の強化につながる経営改革の視点から、企業の体力、規模、特色等に対応した早急な企業戦略の策定が課題
2 企業戦略の4つの方向
1)不採算部門からの撤退と優位部門への重点化
・自社の収益構造を分析し、経営資源を重点配分
2)成長期待分野、戦略的投資分野の強化
・今後成長が期待できる分野で、将来的に自社が競争優位性を持ち得る分野に、経営資源を戦略的に重点投入
・このような分野として、1)都市開発、福祉、環境、情報などソフト能力も必要な分野、2)高度な技術力や提案力が要求される海外建設市場、3)維持・更新分野、4)施工のノウハウが活用できる分野(例えば、不動産の証券化の際に必要となる建築物の評価業務)など
3)コストダウンによる競争力の強化
・新たな施工技術の開発や人件費の削減、物流の効率化、情報技術の活用など、コスト内容を吟味した削減の促進。その前提条件として、コスト構造の明確化が重要
4)品質や商品開発力、提案力による競争力の強化
・品質やソフト面の能力等による差別化、競争力の強化(長期間の品質保証等、施設の運営方法等提案力の強化など)
・その際、品質に応じたコストの明示、特許など知的財産権の獲得・活用、継続的な提案システムの構築等により、競争優位性を確保
3 経営組織の革新と連携の強化
・「選択と集中」の方策として、分社化、執行役員制度などの「経営組織の革新」と異分野・異業種も含む企業との新たな「連携の強化」が選択肢
・具体的には、1)自社の分社化、2)MBO等の活用による企業分割、3)他社との業務提携、4)フランチャイズ、5)営業譲渡、6)他社への資本参加、7)合併など
V 行政による環境整備の課題
 (行政の基本的スタンス ─競争的な市場環境の整備─)
・建設産業再生は、各企業が、各々の自己責任、自助努力で、「経営組織の革新」と「連携の強化」を進め、達成すべきもの。行政の役割は、その動きを促進するような「競争的な市場環境」を整備すること
・とりわけ、大手総合建設会社の再生に向けた努力を促す市場環境を早急に整備
1) 経営組織の革新と連携の強化への対応
・各企業の多様な組織形態の選択を可能にし、経営の自由度を拡大する観点から、分社化、資本参加等に対応した経営事項審査のグループ評価のあり方、新たな企業連携のあり方などについて検討
2) 情報開示による透明で公正な市場の確保
・競争力のある企業の評価・選択が可能な企業情報の的確な開示に資するため、企業会計基準の国際化への対応、建設工事原価計算基準の策定、経営事項審査に関する企業情報等のデータベース化などについて検討するとともに、これらの情報の活用方策を検討
3) ニーズの変化に応える市場づくり
・品質や商品開発力、提案力による競争を促進するための環境整備として、PFIやCM、PMなどの普及促進方策や瑕疵担保保証、品質保証のあり方、技術力が評価できる発注方式や知的財産権の一層の活用方策について検討
・また、新たな成長分野の研究や官民共同による技術開発の推進、海外建設市場への展開の円滑化の促進などを実施
4) 公共工事における競争性・透明性の確保
・入札・契約制度改革の徹底と民間の技術力の活用等を推進するとともに、不良・不適格業者の参入やいわゆる「上請け」等の弊害に対し、適切に対処
・このため、多様な入札・契約方式の導入、JV制度・運用のあり方、過度な分割発注の是正などについて検討するとともに、不良・不適格業者の排除を徹底
5) リストラの促進とセーフティネットの整備
・「建設産業の再生」の過程で生ずる「雇用転換」や「過剰債務・設備の解消」「連鎖倒産の防止」については、建設産業界での努力はもとより、広く全産業的な視野と関連する制度の活用によって対応
(参考) 中小建設業者等の経営改善のための措置について
 地方における公共投資の削減などを受けて、中小・中堅建設業者を取り巻く環境が一段と厳しいことを踏まえ、平成11年12月9日に、中小建設業者等の受注機会の確保、円滑な資金供給の確保等を内容とする措置を取りまとめ、発注機関、業者団体に通知した。概要は以下のとおり。
1 受注環境の改善や中小・中堅建設業者等の受注機会の確保
(1)補正予算の円滑かつ着実な実施、中小建設業者等の受注機会の確保、適切な発注ロットの設定
(2)経常JV制度の活用の推進
(3)発注標準の引上げや下位等級業者の上位等級工事への参入の促進
2 建設業者に対する円滑な資金の供給・信用の補完
(1)下請セーフティネット債務保証事業の拡充
(2)前払金等の円滑化
(3)前払金支払制度の改善
(4)元請下請取引の適正化による下請代金支払の円滑化
(5)前払金の拡充、部分払、中間前払金等の利用促進の要請
3 建設業の経営革新への支援等
○中小建設業者の経営革新への取組み支援