(2)総合的な交通体系の形成に向けて

1)交通機関相互の関係
 戦後日本の交通体系は各交通機関ごとにおおむね順調に形成されてきたが、これらの相互の関係について以下で分析を行う。
 国内における旅客輸送について各交通機関の輸送分担率を距離帯ごとにみると、
  近距離帯(図表の100-300km未満)では自動車が、
  中距離帯(図表の500km-750km未満)では鉄道及び自動車が、
  長距離帯(図表の1,000km以上)では航空が、
それぞれ最も大きい割合を占めている。

図表I-2-18 距離帯別機関分担率(旅客、平成11年度)
図表I-2-18 距離帯別機関分担率(旅客、平成11年度)



図表I-2-19 距離帯別機関分担率(貨物、平成11年度)
図表I-2-19 距離帯別機関分担率(貨物、平成11年度)



 また、同じく貨物輸送の機関別分担率をみると、近距離帯では自動車が、長距離帯では海運がそれぞれ最も大きい割合を占めており、中距離帯では両者が相半ばしている。
 しかし、このような分担関係は決して固定的なものではなく、次にみるように新規交通サービスの提供等により新たな競争関係が生じダイナミックに変動するものである( 「秋田新幹線「こまち」開業による分担率の変化」 参照)。
 また、旅客輸送と貨物輸送とで輸送特性が違うため、地域の経済社会発展にとって複数の輸送機関がそれぞれに役割を果たし、相乗効果を発揮することにつながる。例えば、中距離帯の輸送区間においては、鉄道整備が旅客輸送、道路整備や港湾整備が貨物輸送の増大にそれぞれ大きく貢献し、人流・物流の両面からバランスのとれた地域の発展を促してきたと考えられる。

2)総合的な交通体系構築の必要性
 上に見てきたように、日本の交通においては各輸送機関がそれぞれの輸送特性を発揮し、時には互いに競争しつつ、あるいは補完しつつ、ネットワークを形成して経済社会の発展に寄与してきた。
 しかし、これまでの取組みは各輸送機関ごとの量的な拡大に重きが置かれ、異なる交通機関の間の連携が十分に推進されてきたとは言い難い。この結果、例えば、日本における高規格幹線道路等と空港・港湾とのアクセス率は諸外国に比べて低い状況にある。
 このように国内交通ネットワークと国際交通ネットワークの接続に問題があることは、グローバル化が進展する国際社会の中で日本が競争力を確保していく上での大きな障害となると考えられる。
 今後は異なる交通機関の連携を推進し、これらが相互に補完・競争し、国内・国際ネットワークがスムーズに接続された効率的な交通体系を構築していく必要がある。

図表I-2-20 主要な空港・港湾と高速道路網のアクセス(高速道路インターチェンジ等から10分以内に到着可能な主要な空港・港湾の割合)
図表I-2-20 主要な空港・港湾と高速道路網のアクセス(高速道路インターチェンジ等から10分以内に到着可能な主要な空港・港湾の割合)


 
秋田新幹線「こまち」開業による分担率の変化

 秋田新幹線「こまち」は平成9年3月22日に運行開始し、これにより東京-秋田間の鉄道での所要時間は約48分の短縮となった。これにより、首都圏-秋田間における鉄道の輸送分担率は平成8年度の46.5%から平成9年度に58.5%に大きく上昇した。

図表I-2-21 東京圏-秋田県間の公共交通機関別輸送分担率の推移
図表I-2-21 東京圏-秋田県間の公共交通機関別輸送分担率の推移




 

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