(2)防災上の新たな課題の発生

 都市への急激な人口集中による住宅需要の増大に伴い、大都市の高度成長期に新たに市街化された地域を中心に、オープンスペースの少ない木造密集市街地が形成された。これらの木造密集市街地は、平成7年の阪神・淡路大震災においても明らかになった通り地震や火災に対し極めて脆弱であり、早急な解消が必要である。
 一方、第1節でみた通り自然災害による死者・行方不明者数は減少しているものの、水害被害額はほぼ横ばいの状況にある。これは、これまでの治水事業により浸水面積は減少しているが、都市化の進展により氾濫区域内に資産が集中しており、単位面積あたりの浸水資産額が増加しているためである。このことは、近年多発する都市型水害の被害の甚大さからも分かる。
 また、都市臨海部では、いわゆるゼロ・メートル地帯等において人口・資産の集積が進んだことから、地震・津波・高潮発生時には大きな被害が想定されている。
 さらに、都市部においては宅地等の開発が山裾まで広がりを見せているが、これに伴い土砂災害危険箇所数も増加傾向にある。

図表I-2-30 一般資産水害密度(注)等の推移(過去5ヵ年平均)
図表I-2-30 一般資産水害密度等の推移(過去5ヵ年平均)



 以上のように、高度経済成長期の急激な都市化の進展は、防災面で脆弱な都市構造を生み出してきたともいえる。


(注)水害密度:浸水面積1ha当たりの一般資産の被害額

 

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