1.構造変化に伴う日本経済の長期低迷と財政赤字の大幅な拡大

 バブル経済崩壊後の長期の景気低迷は、単なる景気循環の長期化ではなく、その背景として、戦後飛躍的な成長を遂げてきた日本経済の本質が変化しつつあることが指摘されている。例えば、いわゆる「土地神話」の崩壊等を受けて「資産デフレ」の状態にあり、日本型終身雇用制度の維持も困難になりつつある。少子高齢化が進展し、今後は人口の減少も予想されている。また、企業経営も、規模やシェアの拡大から株主の重視・利益率の向上へと転換を迫られ、グローバル化の進展ともあいまって製造業の生産拠点の海外流出が加速している。こうした中、雇用に対する不安、財政収支の悪化などによる国民の将来不安の高まりが個人の消費を抑制し、景気後退の要因となっている。デフレスパイラルへの懸念を払拭し、21世紀における新たな成長の展望を切り開くためにも、これまでの日本型社会システムの変革が不可欠となっている。

 

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