(1)投資余力の減少への対応

 90年代からの長期にわたり経済低迷が続く中、政府はおおむね積極的な財政出動を行ってきた。その一環として国土交通関係社会資本整備も量的な拡大が見られた。現在、このような積極的な財政運営と税収の落ち込みに伴う公債残高の急増が問題視されているが、バブル崩壊後の急激な景気後退や、金融システムの崩壊を未然に防止するための政策の一つとして発動されたものであり、一定の評価ができる。
 しかしながら、国・地方とも財政状況が大幅に悪化した現在、追加的な社会資本整備を目的とした財政出動を検討する場合には、景気動向のみならず財政状況などを踏まえた総合的な判断が必要となっている。また、将来的には少子高齢社会の到来に伴い投資余力が減少していくと見込まれる。

図表I-2-31 公債依存度・公債発行額の推移
図表I-2-31 公債依存度・公債発行額の推移



図表I-2-32 地方債現在高の対歳入比推移(地方公共団体)
図表I-2-32 地方債現在高の対歳入比推移(地方公共団体)



 このような中で、社会資本整備について、従来にも増して重点化・効率化や、PFIの活用などによる民間投資の誘発が要請されている。具体的には、1)循環型経済社会の構築など環境問題への対応、2)バリアフリーなど高齢化への対応、3)地方の個性ある活性化、まちづくり、4)都市の再生、5)IT等の分野への重点化が指摘されている。
 また、交通についても、輸送需要の伸びの鈍化が見込まれる。2010年までの長期需要予測をみると、
・まず、国内交通については、経済の低迷や少子・高齢社会の到来により、旅客輸送、貨物輸送ともに需要の伸びが相当低くなることが予測される。
・一方、国際輸送については、従来に比べて伸び率は鈍化するものの、旅客輸送、貨物輸送(特に海上コンテナ、航空貨物輸送)はともに引き続き需要が拡大していくことが見込まれる。

図表I-2-33 過去15年間と比べた今後15年間の交通需要予測
図表I-2-33 過去15年間と比べた今後15年間の交通需要予測


 このようなことから、今後においては、従来のような量的拡大に主眼を置いた整備から転換し、既存施設の活用や輸送機関の間の連携を重視した質の高い総合的な交通ネットワークの形成が求められている。


 

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