(2)国際競争力強化

1)国の国際競争力強化
 戦後日本は急速な経済発展を遂げたが、近年では国際競争力が著しく低下しているとの懸念がある。民間機関の調査によると、成長率、産業基盤、政府の効率性等の観点から見た日本の国際競争力ランキングが1997年の17位から2001年には26位まで低下したとされる。

図表I-2-41 国・地域の国際競争力ランキング
図表I-2-41 国・地域の国際競争力ランキング



 企業活動が容易に国境を越える状況の中で、国全体の国際競争力を維持・強化していくためには、企業から見て国際的に遜色のない経営環境を提供し、競争力の高い産業を集積させる必要がある。
 それでは、企業からみて魅力的な経営環境とはどのようなものであろうか。この点に関し、世界銀行の調査(注1)では主要製造業にアンケートを行い、企業の活動拠点の立地を決定する上で、どのような要素が優先されるかランク付けをした。これによれば、「先進的社会資本」(注2)を備えているという条件がいずれの場合にも重視されている。

図表I-2-42 企業が立地国・地域を選択する際の要素順位
図表I-2-42 企業が立地国・地域を選択する際の要素順位



 したがって、国の競争力を確保し、一定の経済成長を図るためには、高度な機能を備えた国際交流・物流基盤を整備することが重要となる。なお、「先進的社会資本」以外の社会資本である「一般的社会資本」も比較的高いウェートが置かれているので、所要の整備が望まれる。

2)都市の国際競争力強化
 国の競争力を確保するためには、その経済の中心である大都市の競争力を高めることが必要である。競争力のある大都市においては、世界中から人やモノが集まり、またそれらが世界中に発信される。人やモノの集積により産業や生活、文化において創造的な活動が活発化し、経済成長や豊かな生活、斬新な文化の創出につながるのである。その果実は世界各地に伝わり、発信元である大都市のイメージを高める。そしてそれが新たな集積を呼ぶ。国際競争力のある大都市においては、このような創造と発展のダイナミズムが展開されると考えられる。
 我が国においてこのような国際的に魅力のある都市の発展を図るためには、国際交流・物流基盤整備とともに、都市構造を改める等総合的な都市再生策を講じていくことが必要である。

3)産業の国際競争力強化
 一方、グローバル化に伴うメガ・コンペティションに直面する産業の国際競争力を高めることが、日本経済の再生を図る上での喫緊の課題となっている。
 国土交通産業も例外ではなく、特に国際航空運送事業や外航海運業等は直接海外事業者との激しい競争に晒されてきた。これら産業の国際競争力を高めるためにも、産業活性化策を講じていく必要がある。
 一方、他の産業の国際競争力を高めるためにも、物流の効率化等を図る必要がある。特に、上記のような「先進的社会資本」としての高度な物流システムを提供することは、産業全体としての競争力を高めていくために不可欠であると考えられる。
 さらに、建設・交通等の分野に係る技術、基準や制度についてもグローバル化が進展しており、これらの分野において我が国の技術・基準が世界的な標準となるよう努めることは、我が国産業の国際競争力強化のためにも必要であると考えられる。



(注1) Mody(1997), Infrastructure Strategies in East Asia, World Bank
(注2) 「先進的社会資本」とは、「情報技術を通じて高度化され、革新的な供給者により提供される交通・コミュニケーションシステム」とされている。

 

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