7.安全・危機管理への意識の高まり

 我が国は戦後、世界で最も安全な国としての評判を確立してきたが、その「安全神話」は20世紀終盤より揺らぎを見せはじめており、また、自然災害についても、近年の人知を上回る規模の災害により、甚大な被害を被っている。
 特に、平成7年1月17日に発生し、6,000人以上の犠牲者を出した阪神・淡路大震災は「安全の確保」の重みを再認識させるものであった。それは、木造密集地域の解消、オープンスペースの確保や住宅、建築物、構造物の耐震性の向上の必要性を浮き彫りにした。加えて、災害時にライフラインの機能低下を最小限にくいとめるための代替輸送の確保、危機管理体制の重要性、防災情報ネットワーク整備の重要性など、ソフト面も含めた総合的な安全確保体制の必要性が明らかになった。また、集中豪雨による地下空間への浸水など、都市化に伴う新しいタイプの災害も発生するようになっている。
 また、鉄道災害や航空災害等による被害についても、輸送機器の高速化や輸送力増強等に伴い被害が大規模化する懸念が高まっている。さらに、近年、地下鉄サリン事件やバスジャック事件等、従来では考えられなかったような凶悪犯罪が多発しており、これらの事故災害や事件への未然防止のための事前の対応及び発災時等の緊急措置等の事後の対応に関する対策と体制の強化が課題となっている。
 平成13年9月11日に米国において発生した同時多発テロ事件は各国に緊急の危機管理対策を迫るとともに、テロを根絶するための国際的な取組みの必要性を高めることとなった。特に同事件はハイジャックした航空機を用いたものであったことから、ハイジャック・テロに対する航空保安対策の強化は国内的にも国際的にも非常に重要な課題であることが痛感された。 一方、IT化が進展する中で航空・鉄道等の重要インフラの基幹をなす情報システムに対して電子的な攻撃(サイバーテロ)が行われた場合に国民生活や社会経済活動に重大な被害が生ずるおそれがある。この他にも、国土交通省として交通機関、重要施設等に対するテロ対策のさらなる強化、安全確保に全力を尽くす必要がある。
  国際的には、冷戦終焉後のパワー・バランスの変化に伴い地域的紛争の危険性が高まっており、特に極東では北朝鮮による長距離ミサイル発射事件や日本近海における不審船事件等が発生し、我が国に直接的な脅威をもたらしている。
 国土交通行政としては、これまでの経験から得られた貴重な教訓を決して風化させることなく21世紀の安全対策へと活かすとともに、新たな脅威への備えも万全なものとするため危機管理体制を強化する必要がある。

 <阪神・淡路大震災>
阪神・淡路大震災

 <不審船>
不審船

 

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