(4)公共事業の効率、効果、進め方について

  前章でみたとおり、社会資本整備の歴史が浅い我が国では、いまだ整備が立ち遅れている分野・地域が存在する。また、経済社会の変化に対応するための新たな課題が顕在化しており、これら山積する課題に対応するために公共事業の役割は依然として大きいと考えられる。しかしながら、急速に事業を展開してきた過程で、ともすれば国民に対して事業の必要性や効果をしっかりと説明する努力が不十分な面もあったことも否定できない。なお、「改革と展望」では、「ややもすると必要性の低い公共投資までが行われがちであるなど改善すべき点が多い。」とされている。
 これまで述べてきたように、財政状況は厳しく、加えて将来、既存ストックの維持更新費が増大すると見込まれる。新規投資に振り向けることのできる資源が限定される中、今後の公共事業は、事業の重点化、既存ストックの活用等、新たな発想で効率性を追求していかなければならない。また、例えば、堤防が洪水を防止していることや、資源の大部分が港湾を通じて輸入され、生活を支えていることを普段は忘れているように、事業がいったん完成してしまうと、その効果が当然のこととされ、意識されなくなってしまうという面もあり、事業の必要性・効果をわかりやすく国民に説明し続ける努力が必要である。
 また、借入金により施設の整備を行い、その利用者の負担(料金)によりその返済を行うという整備方式に対し、需要予測が実績と乖離した場合は、国民の負担になるとの懸念が指摘されている。この方式は、厳しい財政制約の下、緊急に社会資本整備を進める上で有効な手段であり、事実、高速道路、国際空港の施設の整備が着実に進んできた。しかしながら、需要予測が実績と乖離する場合もあり、事業を進めるに当たっては、こうした乖離がなくなるよう需要予測の精度向上の努力が必要となるとともに、採算性の検証や、情報開示を一層進めることが必要である。

 

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