(1)地震・火山活動等の監視体制の充実

1)気象庁における取組み
(ア)地震・津波対策
 気象庁は、地震、津波による災害の防止・軽減を図るため、全国に地震計や震度計を整備して地震活動を24時間監視し、地震・津波に関する情報等を提供している。さらに最新のIT技術を活用した地震津波監視システムを導入し、より適確な地震活動の監視と地震情報、津波予報・警報を高度化するとともに、各関係機関とより一層の連携を図っている。

図表II-6-7 地震津波監視システムの概要
図表II-6-7 地震津波監視システムの概要

 また、地震発生時には、地震動による被害が発生する前に防災対策を実施できるよう、地震発生直後から大きな地震動が到達する前に揺れの大きさ等を予想して伝える「ナウキャスト地震情報(地震発生後の即時的情報)」の実用化に向け、調査・検討を行っている。

(イ)火山対策
 火山については、活動が活発な20火山の常時監視を実施しており、13年度には、気象庁本庁、札幌・仙台・福岡各管区気象台に火山監視・情報センターを設置し、20火山以外の臨時観測によるデータや関係機関のデータも含め各種の観測データを集約し監視することとなった。同センターでは、火山活動の総合的判断を行い、大学等の関係機関とも連携をとり、火山災害の防止・軽減を図るため、的確な火山情報の発表を行うこととしている。火山活動が活発化した火山については、火山機動観測班を派遣し、火山観測・監視体制を強化することとしている。

(ウ)MTSAT
 MTSAT(Multi-functional Transport Satellite:運輸多目的衛星)は静止気象衛星の機能と、航空管制等の機能を有しており、15年度に打ち上げることとしている。
 MTSATは静止気象衛星「ひまわり」の観測業務を引き継ぐのみならず、気象災害の予防・軽減に向け、航空機、船舶、ブイ及び山岳など交通手段の不便な観測地点で観測された震度データや地震津波に関する緊急情報の中継機能も備えており、さらなる災害の防止・軽減を図ることとしている。

 <MTSAT>
MTSAT

2)海上保安庁における取組み

(ア)海底地殻変動等の監視
 海上保安庁では、日本海溝沿い及び三宅島付近に海底基準局を設置し、陸から離れた海底プレート境界付近の地殻変動監視を始めた。これにより、プレート境界域の海底地殻変動に起因する巨大地震発生予測の実現を図っている。また、南関東の離島にGPS受信機を設置し、地震、火山噴火の前兆現象として起こる地殻の変形を常時監視している。

(イ)海底火山噴火に係る観測等
 海底火山の噴火の前兆として周辺海域の変色水の発生や海水の温度上昇、火山音の発生が認められる。これらの現象を事前に把握し、海底火山噴火を予知するための基礎情報の整備及び総合的な調査を行っている。

図表II-6-8 火山噴火予知調査概念図
図表II-6-8 火山噴火予知調査概念図

(ウ)大陸棚調査
 国連海洋法条約において、沿岸国の大陸棚の範囲は200海里までであるが、科学的根拠を示すことで、最大350海里まで認められることとされており、海底資源開発の権利を有する大陸棚の範囲の拡張を図ることは日本にとって有益なことである。これまで海上保安庁の調査により、国土面積の2倍程度の海域について、大陸棚を延長できる可能性があることが判明している。今後さらに精密な調査を実施する。

3)国土地理院における取組み

(ア)地殻変動観測・監視体制の強化
 国土地理院では、全国に約1,000点設置している電子基準点によるGPS連続観測・監視に努めるほか、リアルタイム国土監視基盤の整備を推進している。
 全国的な地殻変動の状況や平成12年の鳥取県西部地震、13年の芸予地震等の地震に伴う地殻変動の様相を明らかにするとともに、12年の有珠山、三宅島の噴火では、火山活動に伴う地殻変動を時々刻々捉えることにより住民の避難等の防災対策に貢献することができた。

図表II-6-9 GPS連続観測が捉えた日本列島の動き
図表II-6-9 GPS連続観測が捉えた日本列島の動き

(イ)地震、火山噴火等災害をもたらす現象に関する研究
 GPS(注1)、SAR(注2)など最新技術による観測成果から、地震の発生メカニズム及び火山噴火の発生メカニズムを明らかにし、地震や火山活動の予測を行う。また、コンピュータの仮想現実空間の中に日本の地殻活動や地震、火山活動などを再現し、これらの予測を行う。さらに、GIS (注3)を活用し、地形と土砂災害等との関係を解析する。

(ウ)地震等の地殻活動に関連する会議
 地震予知研究に役立てるため、関係行政機関及び大学等と連携し、それぞれに取得した各種のデータ及び情報を交換し、総合的な検討を行う地震予知連絡会や、各省庁、公共機関等がそれぞれの目的で設置している潮位観測施設の潮位記録から地殻活動を検出し取りまとめて公表する海岸昇降検知センターの運営を行っている。



(注1)全地球測位システム。上空約2万kmを周回する24個のGPS衛星(6軌道面に4個ずつ配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局、測位を行うための利用者の受信機で構成されている。航空機・船舶等では、4個以上のGPS衛星からの距離を同時に知ることにより、自分の位置等を決定することができる。
(注2)合成開口レーダー。地表の画像を観測するためのリモートセンシングセンサーの1種で、航空機や人工衛星に搭載して用いられる。
(注3)地理的位置を手がかりに位置に関する情報をもったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。

 

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