はじめに  

はじめに

 今日、我が国は、かつて経験したことのない大きな転換点を迎えようとしている。この数年以内に、世界の主要国に先駆けて、総人口が減少する過程に入る。人口の減少にあわせて、世界に類をみない急速なペースの高齢者人口の増大、若年者人口の減少も経験していく。
 これらの大きな変化に伴って、労働力の不足、消費・投資の減少などによる我が国の経済活力の低下が懸念されている。急速な少子高齢化の進行は、社会保障負担の増加等を通じて、国民生活にも直接的な影響を与える。
 国土交通行政を取り巻く環境も厳しさを増す。社会保障関連費用の増大などにより社会資本整備に対する財政上の制約が一層強まるものと考えられるほか、社会資本ストック自体の急速な「高齢化」も進み、これに対応するために必要な維持更新費用は新たな分野への投資余力を制約することとなる。
 このような状況の中で、国土交通行政は、単に変化に追随するのではなく、人口構造の大きな変化がもたらす未来の変化を見据えて、活力ある我が国経済社会の構築に積極的な役割を果たしていくことが求められる。国土交通行政に与えられた限りある資源の「選択と集中」を適切に行いながら、人口構造の変化の大きなうねりが本格的に押し寄せる前に、我が国の国際競争力を高めるとともに、この変化をむしろ積極的なチャンスとして真に豊かでゆとりある国民生活を実現していくことを目指し、必要な社会経済基盤の充実や交通政策の推進に取り組んでいかなければならない。
 以上のような問題意識から、本書の第I部では、「人口減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政のあり方」をテーマとしてとりあげている。人口構造の変化の動向とそれが地域や社会、経済に与える影響を分析するとともに、変化に対応して国土交通行政が今後目指すべき方向性について議論している。
 また、第II部においては、国土交通行政の各分野の動向を、横断的政策課題ごとに、報告している。

 

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