第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

(高齢者の交通安全対策)

 身体機能の低下や空間認識とのギャップにより事故に遭いやすく、また、一旦事故に遭えば身体に大きな影響を受ける蓋然性の高い高齢者にとって、交通バリアフリーの推進は、単なる移動の円滑化のみならず、安全対策としての意義も大きい。
 一方、高齢者の免許保有者数は着実に増加し、外出時の主な交通手段として高齢者が自分で運転する自家用車の割合は3割に達している。また、その運転頻度も週2〜3回以上の割合が約9割を占めており、移動利便性に優れた自家用車の利用が更に増加することも考えられる。このような状況の中、65歳以上の高齢者が第1当事者(交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者)となった自動車事故件数が平成13年には平成元年の約5倍に増加し、交通事故全件数に占める割合も上昇している。交通事故による死者数の推移をみても、65歳以上の高齢者の割合が高まっている。
 高齢者の交通事故件数が増加している中で、交通バリアフリーの推進等により公共交通機関の利用利便性の向上を図ることは、高齢者層の公共交通機関への利用の転換を通じて、交通事故の低減にも資するものと考えられる。
 また、幅の広い歩道の整備や歩道のフラット化、歩行者等を優先する道路構造等による「あんしん歩行エリア」の形成、車よりも歩行者等の安全・快適な利用を優先する「くらしのみちゾーン(仮称)」の形成等を図ることとしており、これらは高齢者等の事故防止にもつながるものと考えられる。
 このほか、情報技術を活用し、自動車運転者の運転負担の軽減や事故の未然防止等に有効な先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)の開発・普及等の推進を図っており、加齢とともに身体機能が衰える高齢者の安全性の向上にも有効なものと期待される。

 
図表I-3-2-6 年齢別普通免許保有者数の推移

平成3年、8年、13年の推移を見ると、65歳から69歳は約120万人、190万人、260万人、70歳から74歳は約50万人、100万人、170万人、75歳以上は約25万人、55万人、105万人となっている。
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図表I-3-2-7 高齢者(60歳以上)の外出手段

徒歩が60.4%、自分で運転する自動車が33.5%、自転車が26.5%、バスが21.7%、家族等の運転する自動車が21.1%、電車が13.8%となっている。
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図表I-3-2-8 高齢者(60歳以上)の自動車運転頻度

ほとんど毎日が約65%、週に2.3回が25%、週に一回が約7%、月に数回が3%となっている。
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図表I-3-2-9 自動車(第1当事者)運転者の若者・高齢者別死亡事故件数の推移

平成元年を100とした指数で見ると、総数、16歳から24歳では、徐々に低下し、平成13年には総数は88、16歳から24歳は53となっているのに対し、65歳以上では、増加を続け、平成7年には231、平成13年には297となっている。
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図表I-3-2-10 年齢層別交通事故死者数の推移

交通事故死者数の65歳以上の割合は、昭和54年では19%であったのが徐々に増加を続け、平成元年には23%、平成7年には30%、平成13年には37%となっている。
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