第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

コラム・事例 都市と農村との交流等新たな地域間交流の動き

 近年、地方に出掛ける観光客等が、農業や文化・伝統工芸、アウトドア等の体験を通じて、地域の人々と交流する「体験」観光が、新たな地域間交流の萌芽として注目されています。
 これは、景観・史跡等を「見る」だけという従来の観光に代わり、訪れた地域ごとに十分な時間をとり、その地域の魅力を奥まで探索するというように旅行者のニーズが変化してきたことと、受け入れ側となる各地域における交流人口の増加等を通じた地域や産業の活性化への期待の高まりが相乗効果を生むことによるものと考えられます。
 長野県飯田市では、平成8年以降、「体験教育旅行」の受入れ、「ワーキングホリデーいいだ」といった地域間交流の先駆的な取組みが行われています。同市では、農家の高齢化が進み、労働力不足による遊休荒廃地の増加等が課題となっていたことから、田植えや農作物の収穫期等農家の繁忙時に、修学旅行の学生や都市居住者からの体験農業参加者を積極的に受け入れることにより、労働力補完を図るとともに、学生や都市居住者等との間の交流を行っています。
 これらの体験では、参加者は、実際に農村民家に滞在して農作業を手伝うこととなり、個人レベルでの交流がなされる結果、参加者、受入れ農家の双方にとって、満足度の高い交流が実現されています。また、受入れ農家に多い高齢者にとっても、若者との交流を通じて、新たな生きがいや活力を得ることとなり、地域コミュニティの活性化にも役立っています。
 平成13年1月には、近隣の地方公共団体も参加した第三セクター方式による南信州観光公社を設立し、農業体験のほか、伝統工芸体験、自然体験、生活体験等様々な体験プログラムを広域的に展開しており、これまでに延べ約6万4千人(平成8年度〜平成13年度)が体験観光に参加しています。このような地域間交流は、全国各地に広がる動きをみせており、少子高齢化時代に適合した新しい「交流」として、その普及が期待されています。
 
体験観光の模様(飯田市HPより)


 
体験観光の参加者・学校の推移


Excel形式のファイルはこちら


 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む