第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

(交流人口拡大の取組み)

 交流人口の拡大がもたらす経済的な効果を観光についてみると、平成13年の観光消費額が23兆円、生産波及効果としては約50兆円とされ、仮に全国民が年間もう一回宿泊旅行に出かけた場合には約14兆円の生産波及効果があると試算されるなど、我が国経済にとって極めて大きいものである。また、経済面のみならず、過疎化が深刻となっている地域のコミュニティーの維持、人と人の触れ合いを通じた住民意識の向上や高齢者の生きがいの創出等その効果は多岐にわたっている。
 地域間の競争による個性ある地域の発展が求められる中、交流人口を拡大するためには、各地域それぞれの工夫や知恵を活かした独自の取組みを進めることにより、地域の魅力を打ち出していくことが必要となっている。近年、高齢化や過疎化に悩む地方において、国内版ワーキングホリデーやグリーンツーリズムといった体験型交流の促進により交流人口を増やす試みが、全国各地に広がっており、地域社会の活力を維持するための先進的事例として注目を集めている。成功している取組みの大きな要因の一つには、地域全体がもてなしの心を持って参加者を温かく受け入れることを徹底していることが挙げられる。このような交流人口の拡大への取組みを通じて、地域では、単に経済的な側面のみならず、コミュニティーの連帯が生まれ、農業を営む高齢者が若者や子供との交流を通じて生きがいを得るという効果が生まれている。また、地域の魅力や発信力を高めるための地域間連携の動きも各地で進められている。

 このように、我が国が迎える本格的な少子高齢化の進展を、交流人口の拡大を考える絶好の機会としてとらえ、関係者が連携して、交流人口の拡大に取り組むことにより、地域社会を活性化させることが必要である。
 交流人口の拡大を図るためには、個性ある地域の形成と交流活動を支える交通ネットワークの構築が重要である。このため、多様な地域資源を活用した魅力ある観光交流空間づくり等の基盤整備をはじめ、個性的な観光まちづくり、離島等の特色を活かした交流の推進、複数の市町村の連携による地域間交流の促進を支援する事業など、ハード・ソフト両面からの支援を行うとともに、幹線道路網、幹線鉄道や国内航空等のネットワークの整備を推進している。また、ゆとり休暇の取得促進など旅行環境の整備を行うほか、高齢者等を含めすべての人が円滑に観光地に出かけることができるよう、交通機関はもとより観光地宿泊施設のバリアフリー化等に取り組んでいる。

 
図表I-3-3-4 全国民がもう一回国内宿泊旅行に出かけた場合の経済効果

仮に全国民がもう一回、国内宿泊旅行に出掛けた場合、その経済効果を試算すると、旅行による直接的な総消費額が5.8兆円、付加価値が2.9兆円、雇用は50万人に上るが、さらに、生産波及効果は13.7兆円、付加価値効果は7.2兆円、雇用効果は109.2万人にも上っている。

 

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