第II部 国土交通行政の動向 

2.都市の防災性の向上

(1) 都市型水害対策

 人口・資産の集中、地下空間の利用の進展等により、浸水に対する脆弱化が進んでいる都市部において、近年局所的な集中豪雨の頻発などにより、大きな被害が生じている。このため、河川事業、下水道事業、海岸事業、流域対策、ソフト施策等による都市型水害対策を講じることが喫緊の課題となっている。
 
<都市型水害>



1)総合的な治水対策の推進
 都市への人口、産業、資産の集中や流域における開発による流域の保水・遊水機能の低下に起因する、中・下流域の都市部での水害の頻発に対し、河道整備(築堤や浚渫など)や遊水地、放水路の整備などの河川改修、自然地の保全や、貯留施設の設置などの流域対策、警戒避難体制の整備や浸水予想区域の公表などの被害軽減対策を複合的に行う総合的な治水対策を関係機関と連携しながら推進しており、流域貯水浸透事業や雨水貯留・利用浸透施設整備促進税制、日本政策投資銀行による融資等により流域対策としての調整池や貯留浸透施設を整備している。

 
図表II-2-3-2 総合的な治水対策

総合的な治水対策は、大きく分類すると、河川改修、流域対策、被害軽減対策の3種類があり、流域対策には、さらに、保水地域対策、遊水地域対策、低地地域対策の3種類がある。

2)地下空間の浸水対策
 地下空間は、浸水が発生してから短時間で水位が上昇するなど、地上と比較して水災の危険性が高い空間であり、平成13年の水防法の改正により、浸水した場合の早期避難に資する情報伝達体制の整備を促進している。また、地下空間の設計または管理を行う者に対して、浸水対策上留意すべき設計及び管理方法を示した「地下空間における浸水対策ガイドライン」を作成し、普及に努めている。
 
<地下通路の浸水>



3)河川事業と下水道事業の連携による都市型水害対策の推進
 河川事業と下水道事業の連携により、地下貯留施設の整備による洪水調節等、及び流域における貯留・浸透施設の設置による流出抑制対策を集中実施するとともに、ITを活用した各種情報の管理体制や、内水を含めた浸水予想区域の設定、ハザードマップの作成・公表を促進するなど、ハード・ソフト一体となって浸水被害の回避・最小化に向けた取組みを推進する。平成14年度には、渋谷川・古川(東京都)で洪水調節対策等のために地下貯留施設の共同整備などを進めている。

4)水辺都市再生の推進
 背後地に人口、資産等が高密度に集積している荒川(東京都)、淀川(大阪府)等の大河川において、越水や長時間の洪水等に耐えられる高規格堤防(スーパー堤防)を、まちづくりと連携しつつ一体的に整備し、河川空間を活かした安全で快適な潤いのある水辺都市の再生を図る。平成14年度においては、上記の河川を含め6河川で実施している。

 
図表II-2-3-3 スーパー堤防の概念図

スーパー堤防とは、堤防の高さの約30倍程度の幅があり、堤防上では、通常の土地利用のできるものとなっている。

5)都市部の海岸保全施設の防災対策(平成の大改修)等
 多くの人命や財産が集積している都市部の海岸において、ゼロ・メートル地帯等の防護を中心に、機能低下が顕著な海岸保全施設の大規模な改修や耐震強化(平成の大改修)等を実施している。

○新たな法制度による都市型水害対策の推進
 近年、都市部の河川流域において浸水被害が頻発していることから、特定の都市河川及びその流域を指定し、流域水害対策計画の策定、河川管理者による河道外での雨水貯留浸透施設の整備、流域から雨水の流出量を抑制するための措置など総合的な都市水害対策を講じることとした「特定都市河川浸水被害対策法案」を第156回国会に提出したところである。

 

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