第II部 国土交通行政の動向 

(4)水循環系の再生

1)河川の再生
 21世紀における我が国の活力の源泉である都市について、文化と歴史を継承しつつ、豊かで快適な、さらに国際的にみて経済活力にも満ちあふれた都市に再生するため、大都市における水循環の主軸である主要な河川について、河岸の再自然化、水質の改善、親水空間の整備等により、河川の再生を重点的に推進する。
 平成14年度においては、東京都心部の渋谷川・古川における環境の再生、大阪圏の大和川において環状道路と一体的に整備する高規格堤防の推進、道頓堀川における環境の再生、広島市の太田川において水の都を再生するための親水護岸等の整備を行う。

2)海の再生
 東京湾の水質改善には、これまで地方公共団体をはじめ各行政機関において、環境改善のための施策が行われてきたが、後背地に膨大な人口を抱える閉鎖性海域である東京湾は流入する窒素、りん等の汚濁物質により富栄養化が進み、赤潮や青潮が発生し、生息生物に多大な影響を与えるなど、水質の改善が進んでいない状況にある。
 このような状況に鑑み、都市再生プロジェクト第三次決定を受け、水質汚濁が慢性化している大都市圏の「海」の再生を図るため、先行的に東京湾奥部についてその水質を改善するための行動計画を策定することとし、平成14年2月、関係省庁及び七都県市からなる「東京湾再生推進会議」を設置した。
 同会議では、その行動計画(中間とりまとめ 14年6月)において、『快適に水遊びができ、多くの生物が生息する、親しみやすく美しい「海」を取り戻し、首都圏にふさわしい「東京湾」を創出する。』とする全体目標を決定し、関係機関が連携し、目標達成のため、具体的な施策を今年度内の最終とりまとめに盛り込むこととしている。
 陸域からの汚濁負荷の具体的な削減方策として、水質総量規制制度に基づく事業場への規制等を実施するとともに、下水道の整備、地域事情に応じた農業集落排水施設、浄化槽等の各種生活排水処理施設の整備、河川直接浄化、湿地や河口干潟の再生、森林の整備・保全等の水質改善事業を推進している。
 また、海域における具体的な環境改善対策として、干潟・藻場の再生・創造、汚泥の浚渫や覆砂などを効果的に推進することとしている。さらに、水質改善施策の効果を評価するとともに、市民にわかりやすい環境情報の提供が可能なモニタリングを取り入れ、市民の意識の向上や水質改善への自主的な取組みを促すこととしている。

 
図表II-2-4-5 東京湾再生プロジェクト

ごみ、油の回収と水質のモニタリングによる汚染メカニズムの解明や、河川、下水道、海域の総合的な水質改善策を実施している。

3)水循環系再生構想の策定
 都市再生プロジェクト第三次決定を踏まえ、神田川流域(東京都)、寝屋川流域(大阪府)をモデル流域に、「健全な水循環系構築に関する関係省庁連絡会議」が策定主体となり、河川及び下水道を中心に排水系統の再編や水質の改善等に着目した水循環系再生構想の検討を開始した。
 寝屋川流域においては平成14年3月に、神田川流域においては同年7月にそれぞれ検討委員会を設置し、関係地方公共団体、学識経験者及び地域住民が参画して、一般公開により検討を進めている。一般的に都市における水循環系は、不浸透面積の増大などにより降水・浸透・流出・蒸発といった自然の循環系が弱体化し、一方で上下水道などの人工の循環系が卓越した傾向にあることから、自然の水循環系の保全・回復及び人工の水循環系の再構築が再生構想の大きな柱となる。具体的には、緑地などの浸透域の保全や不浸透域を浸透域に戻す取組み、新たな水資源としての下水処理水の有効活用などを検討中である。

 

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