第II部 国土交通行政の動向 

(2)不動産証券化の推進

 不動産の証券化は、約1,400兆円といわれる個人金融資産を「市場の萎縮」と「買い手の不在」に直面する不動産市場に呼び込み、「強力な買い手」を創出し、不動産市場の活性化を促進するものであり、土地の流動化、経済活性化のために不可欠である。
 Jリート(不動産投資法人)、不動産特定共同事業、特定目的会社(SPC:Special Purpose Company)等の実績を合わせた不動産証券化の市場規模は、平成12年度末の3兆4千億円から、13年度末には6兆4千億円に急増しているところである。

 
図表II-5-6-11 不動産証券化スキームの例

不動産証券化の方式には、上場型と非上場型がる。上場型は、一般投資家が証券会社を通じて、Jリートと呼ばれる不動産投資法人が発行する証券に簡単に投資することが可能な商品であり、Jリートが証券発行によって集めた資金で取得した不動産を運用し投資家に配当する仕組みである。また、非上場型は、主に機関投資家向けの商品であり、SPCと呼ばれる特定目的会社などが特定の不動産を証券化し、その資産を管理・運用し投資家に配当する仕組みである。

1)Jリートに係る制度の整備
 平成12年11月の投資信託及び投資法人に関する法律、宅地建物取引業法の改正等によりJリートの組成が可能となった。
 また、13年3月に東京証券取引所において「不動産投資信託証券に関する有価証券上場規程の特例」が制定され、Jリートの上場制度が整備されたことで、株式と同様に証券会社を通じて簡単に売買することが可能となった。
 Jリートは、株式や他の金融商品と比べてミドルリスク・ミドルリターンの新しい商品であり、超低金利下の運用難の状況において、投資の多様化にも寄与するものとして期待されている。

2)Jリートの組成の推進
 平成13年9月10日の2つのJリートの上場以降、15年2月末時点で6つのJリートが東京証券取引所に上場しているところである。
 また15年2月末時点で、約103万口、約4,400億円の不動産投資証券が流通しており、不動産投資証券を発行しているJリートにより取得された総資産の額は、非上場も含めて約7千億円となっている。

3)Jリートの市場の拡大のための課題と対策
 Jリートは、新しい金融商品であるため、知名度が低く、金融と不動産の両面を持つ商品であるため、投資家にとって理解しにくいといった指摘があり、新たに設立された不動産・金融等業界横断的にJリートの普及活動を行う社団法人不動産証券化協会等とともに、官民一体となった投資家に対するきめ細かな普及・啓発活動を実施し、投資家に対するJリートの知名度・理解度の向上を図る必要がある。
 また、投資家がJリートへの投資を検討するためのインデックス(株式会社や債券等の金融資産と比較するための指標)等が使いやすい形で提供されていないといった、投資家のための情報インフラの不足も指摘されており、Jリートの収益率や商品特性等が一覧性のある形で分かるようなJリートに関するインデックス等の整備を促進する必要がある。
 税制面においては、個人投資家がJリートに投資を行う際、配当課税に係る申告不要制度の限度額が1年1銘柄10万円となっていることが、個人投資家層の拡大を抑制する要因となっているとの指摘があったが、平成15年度税制改正において、申告不要限度額が撤廃されることになり、今後、個人投資家によるJリートへの投資が促進されるものと期待される。
 なお、その他の不動産証券化関連税制については、13年度税制改正において、一定の特定目的会社、Jリート等が、一定の不動産を取得した場合の流通税について、軽減措置(注)が講じられた。また、13年秋の臨時国会及び14年の通常国会において、株式等に係る各種の特例(申告分離課税の税率の軽減、損失の繰越控除、緊急投資優遇、特定口座内での譲渡に係る所得計算及び申告不要の特例措置)の適用に関し、上場株式と同様に扱うこととされた。



(注)登録免許税の税率16/1000、不動産取得税の課税標準2/3控除、土地の取得に係る特別土地保有税非課税

 

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