第II部 国土交通行政の動向 

3.建設産業の再生

(1)建設産業の再編とセーフティネットの確立の促進

 我が国の建設産業は、国内総生産の約11.5%に相当する約57兆円の建設投資を担うとともに、全産業就業人口の約10%を占める618万人の就業者を擁する我が国の基幹産業である。
 建設産業は投資の低迷、建設業者数と建設投資のバランスの崩壊など市場の大きな構造変化の中で、厳しい経営環境に直面している。
 建設投資を見ると、平成14年度の見通しは約57.1兆円で、建設投資のピークであった4年度(約84.0兆円)と比べると32%減少している。これらのうち政府投資は、景気対策による事業費追加もあって、12年度には30.4兆円と4年度頃から横ばいないし微減にとどまっていたが、構造改革が進められる中で、13年度は27.6兆円、14年度は25.1兆円と大きく減少することが見込まれている。
 一方、建設業者数を見ると、平成14年3月末は571,388社で、4年3月末(522,450社)と比べると9.4%増加している。これに対して公共工事を元請で受注した業者数と考えられる公共工事前払実績業者数を見ると、13年の累計は85,266社で、4年の累計(65,309社)と比べると30.6%の増加となっており、公共工事の受注においても厳しい競争が繰り広げられているものと考えられる。
 この結果、建設産業の利益率は大きく低下しており、平成13年度の営業利益率、経常利益率はともに1.4%で、ともに4年度(3.8%、3.2%)の半分以下となっており、また、全産業の平均(2.2%、2.1%)を下回っている。また、13年の倒産件数を見ると5,852件で、4年(2,845件)と比べると2.06倍となっている。
 このように建設産業は厳しい経営環境となっているが、中長期的にも建設投資の大きな伸びは期待できず、今後とも厳しい状況が続くものと考えなければならない。

 
図表II-5-6-12 建設投資(名目値)、許可業者数及び就業者数の推移

平成14年の建設投資は、民間投資額が前年より0.9兆円減り32.0兆円、政府投資額が前年より2.5兆円減り25.1兆円となった。また、平成13年の許可業者数は57万1千社、平成14年平均の就業者数は618万人となり、許可業者数は2年連続、就業者数は5年連続の減少となった。
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図表II-5-6-13 建設業者倒産件数と負債総額の推移

平成13年の建設業者倒産件数は前年より76件減少し5,852件であったが、一方、負債総額は前年より5,754億円増加し1兆9,618億円となった。
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 建設産業はこのような厳しい経営環境に直面しており、特に過剰債務を抱えた大手ゼネコン等については、不良債権処理が加速する中で、既に再編の動きが具体化している。国土交通省としては、平成13年4月に決定された緊急経済対策を受け、「建設産業の再編の促進に関する検討委員会」を開催し、14年4月には検討委員会の「最終報告」を発表した。これを受け、特に大手ゼネコン等について、履行保証割合の引上げ等により経営不振企業の公共工事への参入を抑制する措置等を導入するとともに、持株会社等新たな会社法制を活用した経営統合等を促進するため、建設業許可の円滑化や技術者の異動の自由化等の制度・運用上の改正等を行っている。さらに、政府として決定した「企業・産業再生に向けた基本方針」をふまえ、大手・準大手ゼネコン等を対象に「建設業の再生に向けた基本指針」を14年12月に策定したところである。
 また、今後公共投資が減少する中で比較的公共工事依存度の高い地方の中小・中堅建設企業も再編・淘汰を迫られてくるものと考えられる。このため、企業経営の革新や企業間連携の促進に対する支援を強化するとともに、福祉との連携やリサイクル・環境ビジネスなどの新たな成長分野への進出を促進するなど、生産性の高い企業経営の実現を目指している。

 


 さらに、こうした再編促進とあわせて、中小・中堅建設業者の資金繰り悪化の防止等を図るとともに、今後成長が期待されるリフォーム等の新分野への進出や労働移動の円滑化の促進について、厚生労働省、建設業団体と建設業雇用問題協議会等を通じて連携し、セーフティネットの確立を図るべく取り組んでいる。

 

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