第II部 国土交通行政の動向 

(1) 低公害車の開発・普及

 低公害車の開発・普及は、運輸部門におけるCO2排出量削減対策の最大の柱である一方で、後述する自動車に起因する大気汚染問題へ対応するための排出ガス対策として、非常に重要であり、国土交通省は、これら両方の課題に対応するため、低公害車の開発・普及に取り組んでいく。
 既に実用段階にある低公害車には、CNG(圧縮天然ガス)自動車、電気自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車及び低燃費かつ低排出ガス認定車(注1)があり、開発中の次世代低公害車としては、大型ディーゼル車代替としてのジメチルエーテル自動車やスーパークリーンディーゼル車、理論的には排出ガスを全く出さない燃料電池自動車等が挙げられる。これらの環境負荷を低減した低公害車の開発・普及を促進するため、国土交通省では以下の取組みを行っている。

1)自動車税のグリーン化・自動車取得税の軽減措置
 平成13年度税制改正において、環境負荷の小さい自動車の普及を促進するため、自動車税のグリーン化を創設している。主な内容は、税収中立を前提に排出ガス及び燃費性能に優れた低公害車に対しては排出ガス性能に応じ税率を軽減し、新車新規登録から11年を超えるディーゼル車や13年を超えるガソリン車に対しては税率を重くする特例措置を講じるというものである。また、低公害車等の取得に係る自動車取得税の軽減措置を合わせて実施しており、低公害車の一層の普及・開発を図っている。
 これらの取組みにより、技術開発の進展や自動車メーカーの協力、ユーザーの環境志向も相まって、自動車税のグリーン化税制で軽減の対象となる自動車の型式数は、平成12年12月末79型式から、14年9月末には253型式に増加し、14年度上半期において新車新規登録台数の約57%にあたる約107万台の低公害車が新たに登録されている。特に、超低排出ガス(☆☆☆)(注2)かつ低燃費ガソリン車については、同期間における全新車新規登録台数の約21%であり(12年度下半期においては約1%)、低公害車のなかでも特に排出ガス性能に優れた自動車の登録が増加してきている。このような状況を踏まえ、平成15年度税制改正では、軽減対象をより環境性能の優れたものに絞込みを行うとともに、LPG自動車を対象に加え、燃料電池自動車を含む電気自動車等についても引き続き対象とすることとしている。なお、自動車取得税について、低燃費車特例の軽減対象に関し同様の絞込みを行いつつ、LPG自動車を対象に加えるとともに燃料電池自動車を含む電気自動車等についても引き続き軽減対象とし、また、低PM認定車への特例措置を新設することとしている。

 
図表II-7-2-3 自動車税のグリーン化・自動車取得税の軽減措置(平成15年度税制改正後)

環境に配慮した自動車に対して、自動車税を50%軽減し、自動車取得税については電気自動車2.7%減、ハイブリット車2.2%減、低燃費かつ低排出ガス認定車は取得価格から30万円減額している。
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2)国における率先導入
 内閣総理大臣の低公害車率先導入方針及びグリーン購入法に基づく国土交通省の「環境物品等の調達の推進を図るための方針」などに基づき、平成16年度末までに一般公用車を電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ハイブリット自動車、☆☆☆かつ低燃費車に切り替えるよう、国土交通省として積極的に取り組むとともに、地方公共団体などに対しても同様の取組みを働きかけている。
◎環境物品等の調達の推進を図るための方針
 一般公用車は、電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車または、☆☆☆かつ低燃費車のいずれかを145台調達する予定。
 一般公用車以外の自動車は、1)電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車または、☆☆☆かつ低燃費車のいずれかを277台調達する予定。2)1)を含め、自動車の調達を実施する場合、調達目標は100%とする。

3)低公害車開発・普及のための支援策
 平成14年度には、大都市地域における低公害バス・トラックの導入支援、大型ディーゼル車等に代替する次世代低公害車の開発及び安全・環境上の技術基準の策定を実施している。
 この他、低公害車購入に必要な実用的情報を、地方自治体・企業等の自動車購入責任者に対し直接提供する「低公害車メールマガジン」を発行しているほか、これらの事業者と国の間で双方向に情報を交換する「低公害車フォーラム」を運営するためのシステム構築を行っている。また、地方運輸局において、低公害車導入促進協議会を設置し、地方公共団体、運輸事業者、産業界等に対して低公害車への切り替え要請や啓発活動を行っている。

4)自動車の燃費改善
 自動車の燃費の改善を推進するため、エネルギー使用の合理化に関する法律に基づく燃費基準の策定や自動車の燃費の公表等を行っている。この結果、平成12年度に出荷されたガソリン乗用車のうち約50%が燃費基準を達成しており、平均燃費値は、平成7年度と比較して約14%向上した。また、車両総重量2.5トンを超える重量車の燃費測定方法やLPG自動車の燃費基準について取りまとめた。

5)大型トラックに対する速度抑制装置装備の義務付け
 高速道路における速度超過による事故の防止、消費燃料の抑制を図るため、大型トラックの走行速度を90km/h以下とする速度抑制装置の装備を平成15年9月から大型トラックに義務付けることとしている。

6)トラック運送事業者におけるグリーン経営の促進
 トラック運送事業において、エコドライブの実施、低公害車の導入、自動車の点検・整備等の環境改善に資する取組みを実践するグリーン経営を推進するため、グリーン経営推進マニュアル(平成14年3月策定)の普及を推進しており、旅客自動車運送事業についても、バス、法人ハイヤー・タクシー事業の業態に合ったグリーン経営推進マニュアル(平成14年12月策定)の普及を推進している。

7)EFV(Environmentally Friendly Vehicle)国際会議
 主要国交通大臣会合(平成14年1月)や「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(14年8月26日から9月4日開催)において国際的な政策協調による環境にやさしく低廉で社会的に受入れ可能な優れた車両技術の開発や普及の必要性が指摘されたことを踏まえて、平成15年1月23、24日、東京にて、国際的な政策協調を進める機会を提供することを目的とし、第1回EFV国際会議を開催した。19の国・国際機関から約140名の参加のもと、EFVの普及促進及び環境性能を大幅に改善した次世代EFVの開発推進、更には自動車排出ガスに密接に関連する燃料品質や発展途上国における対策について議論が行われ、2005年には第2回EFV国際会議を開催することとなった。



(注)1
「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に基づく燃費基準(トップランナー基準)早期達成車で、かつ「低排出ガス認定実施要領」に基づく低排出ガス認定車
2
最新排出ガス規制値から有害物質を75%以上低減させた自動車(☆は25%以上低減、☆☆は50%以上低減)

 

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