第II部 国土交通行政の動向 

第1節 技術研究開発の推進

(1)総合的な技術研究開発の推進

 技術研究開発の実施にあたっては、本省各局、研究機関、地方整備局、北海道開発局において、関係省庁、大学、独立行政法人、民間等との一層の連携体制の充実を図りつつ、分野横断的・総合的な技術研究開発を推進するとともに、その技術を公共事業、建設・交通産業へ積極的に反映させる。

1)研究開発機関等における取組み
 国土技術政策総合研究所においては、国民一人一人の満足度を高めるため、技術政策の企画立案に役立つ研究を実施することを目的とし、「美しく良好な環境の保全と創造」、「安心して暮らせる国土」、「豊かさとゆとりを感じられる生活」、「活力ある地域社会」を実現するための道筋を提案するために必要な研究を実施している。
 国土地理院においては、国民の安全・安心の確保や国土管理の高度化等のために測量技術を応用し、地殻変動、宇宙測地及び地理情報解析分野等の研究を推進している。
 気象庁気象研究所においては、集中豪雨等の的確な予測や大規模地震、火山噴火の予知技術の早期確立及び地球温暖化等の気候変動問題に対処するため、気象・地象・水象に関する現象の解明と予測の研究を行っている。
 海上保安庁においては、船舶の安全な航行を確保するための測量・観測技術及び解析技術の研究開発、漂流予測手法の高度化等に関する研究を実施している。また、海底火山噴火や地震予知のために必要な音波を用いた海底測地技術の研究開発等を実施している。
 国土交通政策研究所においては、国土交通分野における政策形成に寄与することを目的として、社会経済のトレンドの分析及び長期展望の提示、内外における新しい行政手法の調査研究等、各種研究課題について幅広く取り組んでいる。

2)独立行政法人における取組み
 国土交通省の所管に係る独立行政法人は、自律性、自発性及び透明性を備え、業務をより効率的かつ効果的に行うという独立行政法人化の趣旨を十分踏まえつつ、国土交通政策に係るその任務を的確に遂行している。国土交通省所管の独立行政法人のうち、研究を主たる業務内容とするものの概要は以下のとおり。

 
図表II-10-1-1 独立行政法人の研究内容

土木研究所は、土木技術・安全の確保に関する研究開発、良好な環境の保全・復元に係る研究開発、社会資本整備の効率化に係る研究開発を行っている。建築研究所は、建築・都市計画技術に関する安全性の向上のための研究開発、地球環境・地域環境の保全・創造のための研究開発、生活環境の質の向上のための研究開発を行っている。交通安全環境研究所は、陸上輸送及び航空輸送の安全の確保、環境の保全等に係る試験研究と自動車の技術基準の適合性の審査を行っている。海上技術安全研究所は、海上輸送の安全の確保・高度化、海洋の開発、環境の保全に関する研究を行っている。港湾空港技術研究所は、港湾、海岸、空港等の整備等に係る工学的諸課題に関する原理・現象の解明、効率的・効果的な事業実施への支援を行っている。電子航法研究所は、新しい通信・航法・監視システム及び新たな航空交通管理に関する研究開発、ICAOにおける国際標準策定作業への貢献を行っている。北海道開発土木研究所は、本州等とは異なる積雪慣例な気象、軟弱な地質などの条件下にある北海道において、開発事業を効率的に推進する上で必要な土木技術上の諸問題を解決するための研究開発を行っている。
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3)地方整備局における取組み
 各地方整備局技術事務所においては、地域に根ざした技術開発を行うことにより、各工事事務所が抱える技術的諸問題を解決し、事業の円滑な実施に資するため、施工・維持管理技術の改善、建設機械の開発・改良及び技術的な基準の作成等を各工事事務所と連携をとりながら実施している。なお、開発成果について活用実施計画を作成し事後評価を実施することで、一層の活用を図っている。
 港湾空港技術調査事務所においては、各地方整備局管内の港湾、空港、海岸整備に関する調査・設計、効果的・効率的整備のための技術開発、環境関連技術、船舶、機械等の修理、管理運営について、各港湾(空港)工事事務所と連携をとりながら実施している。

4)総合技術開発プロジェクト
 建設技術に関する重要な研究課題のうち、特に緊急性が高く、対象分野の広い課題を取り上げ、行政部局が計画推進の主体となり、産学官の連携により、総合的、組織的に研究を実施する制度として「総合技術開発プロジェクト」を実施している。
 平成14年度は、「自然共生型国土基盤整備技術の開発」、「社会資本ストックの管理運営技術の開発」の2課題について新規着手し、計5課題について研究開発に取り組んでいる。

 
図表II-10-1-2 自然共生型国土基盤整備技術の開発(総合技術開発プロジェクト)の例

総合技術開発プロジェクトの例として、国土整備において、地下水や雨水の貯留・浸透機能、水質浄化機能の減退、汚濁物質排出量の増加等がもたされるなどの環境問題が顕在していることに対応し、個別施設や地区レベルの水管理にとどまらず、流域全体を視野に入れた、総合的な水循環管理を実現するための流域圏の再生・修復技術の開発を行う自然共生型国土基盤整備技術の開発がある。

5)運輸分野における総合的な技術研究開発の推進
 運輸分野における技術開発課題は、最近の経済・社会情勢の変化により多様化してきている。そのための研究開発を円滑に推進するため産学官が一体となった総合的な研究体制を組織し、先導的または波及的性格を有し技術水準の向上に著しく寄与するものについて支援を行っている。現在は、「ITを活用した次世代海上交通システムの技術開発」、「深海モニター用小型ロボットシステムの技術開発」を実施している。

6)民間企業の技術研究開発の支援
 新たな技術の開発には、多額の資金と長い投資期間が必要とされる等、リスクを伴うため、日本政策投資銀行の低利融資制度や試験研究費に関する税制上の特例措置により、民間企業が行う技術研究開発を支援している。

 

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