第II部 国土交通行政の動向 

コラム・事例 これもタマちゃん効果?

 平成14年8月7日、多摩川に突然1匹のアゴヒゲアザラシの子供が現れました。早速名付けられたのが「タマちゃん」。夏休みであることも手伝って、連日テレビで報道される人気者に。多摩川を管理する国土交通省京浜工事事務所では、見物人の安全の確保に追われる傍ら、すばやくホームページにリアルタイム画像を流すなどその対応に努めました。その後、台風などの影響からかしばらく姿が見えなくなり、心配の声もあがっていましたが、約1週間後の25日、同事務所の管理する鶴見川に再出現。その後人気は一層高まり、河岸には多いときで1,000人を超える人が詰め掛ける騒ぎに。また、タマちゃんを刺激しないようにと土砂運搬船の航行中止など配慮がされました。ところが鶴見川が全国の一級河川のうち3番目に汚れた河川であったことが報道されはじめたころから、タマちゃんの体を気遣う声が殺到。「早く助けてあげて欲しい」と同事務所の電話は鳴りっぱなしの状況となりました。そこで、同事務所では、環境省、神奈川県、横浜市などの関係機関に呼びかけ、「アゴヒゲアザラシに関する連絡会」を立ち上げ、監視体制を強化するとともに、保護の必要性やその方法について専門家の判断を仰ぐ体制をしきました。
 ちなみに鶴見川は都市を流れる典型的な河川で、その流れの半分以上は下水処理水です。これでも下水のなかった時期の水質よりはかなり改善されており「タマちゃんが来たのは水質が良くなった証拠」という声も聞こえてきました。反面「タマちゃんが安心して泳げるきれいな鶴見川の実現に地域で取り組むべきでは」といった声もありました。いずれにしても「タマちゃんが現れて、多くの国民が川の環境に関心を寄せてくれたことは事実」と同事務所では、パンフレットの表紙にタマちゃんを抜擢し河川浄化を訴えるなど、ここでもタマちゃんが活躍しています。
 その後、タマちゃんは鶴見川を後にして、横浜駅のすぐ近くをながれる帷子川へ。昨年は流行語大賞まで獲得し世間を賑わせ、年が明けても姿を見せるなど見物に来た人を和ませてくれています。
 


 

 

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