第I部 活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開 

(4)多様な主体との連携

【物流業務の一括受託】
 スポーツ用品メーカーN社は、東日本地域、西日本地域それぞれの物流拠点のほかに、取扱商品別及び業務内容別に自営センター、営業倉庫を使用していたため、物流業務が分散し、高コストとなっていた。そこで、N社は、経費削減を目的として、倉庫会社のO社の有する3PL事業(注1)についてのノウハウに着目し、同社に物流業務一括受託を求めた。
 O社は、N社の国内配送拠点を、東日本地域ではマテハンシステム(注2)を導入した新倉庫に、西日本地域では既存倉庫に物流拠点を集約させ、全国的な配送網を再構築した。この結果、物流に係る作業の効率性及び正確性が以前より向上し、N社の物流経費削減に貢献できた。
 このような3PL事業は、荷主企業のコスト削減のほかに雇用の拡大や環境負荷の軽減等の効果も見込まれ、O社としては、海外業務も含め、今後も物流業務の一括受託を拡大していく方針である。

【携帯電話を利用したバス情報サービス】
 交通渋滞の解消や環境対策の観点から自家用車からバスへの交通手段の転換を促進するための施策が講じられているが、自家用車による輸送人員が年々増加する一方で、乗合バスの輸送人員は減少傾向にある。
 このような背景のもと、P社は、IT(情報技術)及び携帯電話の普及も相まって、「インターネット及び携帯電話によるバス接近情報サービス」の実証実験を実施した。その結果、利用客には好評で、バス利便性向上に寄与するサービスと実証されたことから、P社は各携帯電話会社等と連携して、インターネット及び携帯電話等によってバス情報を提供するシステムを本格的に導入した。
 これらの取組みにより、バスの位置情報、接近到着予想時分情報、目的地所要時分情報、時刻表等の情報が即時に、かつ、バス停に到着する以前から得られる等利用者の利便性が向上することから、低迷が続くバス利用者の増加が期待される。

【鉄道事業と連携したまちづくり】
 四国の鉄道会社のQ社では、古い町並みが残る愛媛県内子町において130年近く前に建てられ長い間空き家になり、取り壊される予定となっていた邸宅を修復し、平成11年9月から地域の食材を活用した郷土料理店として運営を開始した。この活用が転機となり、古民家を活用した飲食店や民宿などが新たに開かれるなど、同町のまちづくりが活性化し、県外観光客の入込客数が増加した。

 
<郷土料理店として活用されている邸宅>



 平成15年秋には、新たに子会社を設立し、鉄道事業で培った地域ネットワークを活かし、四国内に眠る歴史的・文化的価値の高い建物を活用した店舗運営を柱とした新事業を本格的に開始した。地域が持つ自然、歴史、文化、町並み、特産品や地域の人々など様々の資源を活かしながらその地域ならではの「地域ブランド」を創造し、「町並み」や「古民家」の整備、活用、運営を通じて、鉄道事業との連携を図りながら地域経済の発展をサポートするとともに、人が交流する町、人が滞在する町づくりに地域の人々と一緒になって考えながら取り組んでいる。

【テクノスーパーライナーの開発・実用化】
 大手造船会社7社は、平成元年から7年まで旧運輸省支援のもと、技術研究組合を作り、従来の船舶の2倍以上の速力で航空機やトラックよりも大量の貨物を輸送できる新型式超高速船(TSL:テクノスーパーライナー)を共同で開発を行った。その後、海運、造船、物流会社等が共同で出資し、同技術を活用した実用化第1船の保有・管理等を行うR社を14年6月に設立した。同船は東京と小笠原を結ぶ航路に17年春から就航することとなっており、同船の就航により従来の片道航海時間の約25.5時間が約16時間に短縮され、また、現在の週1便が週2〜3便に増便されることから、島民生活の利便性の向上及び観光客増による地元経済の活性化が期待されている。

 
<テクノスーパーライナー>




(注)1 3PL(サード・パーティー・ロジスティックス):第II部第6章第5節2.(5)参照
   2 マテハンシステム:マテハンとは、マテリアル・ハンドリングの略で運搬管理のこと。電動式移動棚、ピッキングカート、コンベヤラインや自動仕分け装置等の保管・荷役機器を組み合わせ、効率的かつ精度の高い保管、荷役業務を行うシステム。

 

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