第I部 活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開 

(地域資源の発掘・選択)

 地域づくりに活用されている資源としては、伝統的な街並み、歴史や文化、小説、祭り等の行事、地元の産業や産物、温泉といったものに加え、地域の普段の生活や地形等の自然条件、気風、おもてなしの心など、多種多様な有形無形のものがある。
 地域で生活している人にとっては当たり前のことが地域外の人にアピールする資源となったり、地域にとっては厄介なものでしかなかったことなど、これまで利用されることのなかった資源を活かして地域づくりを行っているところもある。例えば、持ち出せる特産品ではなくありのままの食こそ地域の活力であるとの考えから、町内の家庭料理を地域の豊かな食文化として発信し、反響を呼んだ事例や、風の強い地形という一見不利に思える条件を逆手にとって、大型風車を建設し風力発電に取り組んでいる事例などがある。また、雪国において邪魔者扱いしていた雪の冷熱エネルギーを農産物の生産・加工・貯蔵や住環境へ利用するなど技術開発等によって新たに地域資源化する取組みも見られる。

 
<貯雪槽への雪入れ>



 このような地域資源の発見につながった原因としては、以下のような取組みがあると考えられる。

1)地域を知る
 地域づくりに活用しうる資源を見出すためには、まず、地域の人々が地域のことを知らなければならない。このため、地域の誇り探しの探訪会や景観探訪ウォークなど「地域の宝探し」のような、地域のことを見つめ、地域を知る活動に取り組んでいる事例も見られる。

 
<地域の伝承の学習>



 
<伝統的建造物の見学会>



2)柔軟な発想、発想の転換
 地域に埋もれた資源を発掘し、活用していくためには、柔軟な発想、発想の転換で自らの資源を評価しなければならない。このため、あえて地域への不満や欠点を挙げて、それを長所と言い換えてみることや、女性、高齢者、学生、子供等の参加も有効である。

3)既存資源の新たな活用
 昔の公共施設の建物を地域住民や観光客のための交流・休憩施設として利用したり、特産の農産物を活かした観光農業システムづくりや地元漁業協同組合の参画による観せる漁業への取組みなど、既存資源をこれまでにない手法で活用した事例もある。費用を節減し、投下資本を最小化する上でも、こうした手法は有効である。既存資源の新たな活用も、未利用資源の発掘と同様、柔軟な発想、発想の転換が求められる。

 
<昔の郵便局を活用した交流拠点>



4)外部の目の活用
 未利用資源の中には、日常接している人々にとっては価値を感じない、あるいはマイナスの価値を感じているものが、地域の外部にとっては価値を有していることもある。例えば、徐々に衰退していく商店街を活性化させるため蔵造りの街並みを活かすことに、そこに暮らす商店主よりも、まず建築の専門家等が取り組んだ事例が見られる。このため、外部の目から見た評価を取組みに反映させることも有効である。

5)強みのある資源の選択
 様々な手法により発掘された資源の中で、当該地域の人々が愛着や誇りをもて、また、他の地域との差別化が可能なものを自らが選択し、活用していくことが必要である。

 

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