第II部 国土交通行政の動向 

(1)既存ストックの有効活用

1)住宅市場整備行動計画(アクションプログラム)の施策の推進
 国民のニーズの多様化・高度化に伴い、ライフステージに応じた住替え、買換え、リフォームを通じて、消費者が既存住宅ストックを安心して活用し得るような市場を整備する必要がある。このために、民間と国及び地方公共団体が取り組むべき施策について、その実施時期を明示した住宅市場整備行動計画(アクションプログラム)を平成13年8月に策定し、引き続き各施策を推進している。

2)中古住宅市場流通のための環境整備
 我が国の中古住宅市場の現状は、全住宅取引量に占める中古住宅取引量の割合で見ると、米国等と比較して低い水準にある。このため、中古住宅の「質」及び「価格」の両面の透明性を確保し、質の高い住宅を安心して売買できる中古住宅市場の環境整備のため、既存住宅の性能表示制度や瑕疵保証制度の普及促進、不動産市況情報の提供促進、中古住宅の質を考慮した価格査定システムの普及促進等の施策を推進している。

 
図表II-5-1-1 中古住宅取引戸数の国際比較

中古住宅取引戸数と全住宅取引量に占める中古住宅取引戸数の割合の比較を見てみると、日本は16万戸、11.8%で、アメリカは511万戸、76.1%で、イギリスは146万戸、88.2%で、フランスは73万戸、71.4%である。
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3)リフォーム市場の活性化
 住宅ストックを有効利用し、長く使っていくためには、台所・便所・浴室の設備改善や屋根・外壁の補修など住宅の構造や設備の維持・向上を行うリフォームが必要である。また、高齢社会を迎え、自宅の浴室や便所等におけるバリアフリー工事の必要性も高い。このように、リフォーム市場における需要は今後高まっていくものと思われる。このため、消費者が利用しやすく、信頼できるリフォーム市場の整備と活性化に向けて、住宅市場整備行動計画に基づき、増改築工事における瑕疵保証保険制度の普及、リフォームの容易な長期耐用型住宅の技術開発、リフォーム工事に係る事業者の検索や概ねの工事費用の見積もりが可能なシステム(リフォネット)の普及等の施策を推進している。

 
図表II-5-1-2 住宅リフォーム市場規模の推移

設備等の修繕維持費と増築・改築工事費とを合わせた狭義のリフォーム市場規模も、住宅着工統計上、新設住宅に区分される増築・改築戸数の工事費とリフォーム関連の家庭用耐久消費財、インテリア商品等の購入費を加えた金額をいう広義のリフォーム市場規模も、1996年以降おおむね減少傾向にあり、2002年には、狭義では5.61兆円、広義では7.31兆円の規模にとどまっている。
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4)公共賃貸ストックの計画的改善
 公営住宅については、躯体を残して内装等について全面的な改善を行うとともに共用部分のバリアフリー化等を行うトータルリモデル事業、公営住宅ストックの約半数を占める中層の階段室型共同住宅へのエレベーター設置等を行う個別改善事業等の公営住宅ストック総合改善事業を推進している。
 公団賃貸住宅においては、昭和40年代に供給した住宅を中心として対象住宅を定めて空家発生時に改善を行い、住宅性能等の向上を図るとともに、床段差の解消等の性能向上と所得に応じ家賃の軽減を図る「高齢者向け優良賃貸住宅」への改良等を実施し、既存ストックの有効活用を行っている。

 
図表II-5-1-3 公営住宅ストック総合改善事業による住戸改善実績戸数

公営住宅ストック総合改善事業による住戸改善実績戸数は、平成10年は16,131戸であったが、平成14年には25,928戸になる見込みである。
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5)マンション管理の適正化と建替えの円滑化
 平成14年にはマンションストック戸数は約427万戸に達し、マンションは、特に都市部において、国民の主要な居住形態としての地位を占めている。
 マンションにおける良好な居住環境を確保するためには、その管理が適正に行われることが必要である。そのため、平成13年8月に施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づき、マンションの管理の適正化のための指針の策定、マンション管理士制度の創設、マンション管理適正化推進センターの設置等が行われた。マンション管理士登録者数は、平成15年12月末現在で、7,850名にのぼる。
 また、老朽化等により建替えが避けられないマンションについては、その建替えを円滑化していくことも必要である。このため、平成14年12月に、マンション建替事業の創設等を内容とした「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が施行されるとともに、補助、融資、税制上の特例措置等の支援施策が創設・拡充され、15年度においても、優良建築物等整備事業及び都市再生住宅制度による補助並びに住宅金融公庫の融資等が拡充された。また、15年6月には、「建物の区分所有等に関する法律」等の一部改正法が施行され、建替え決議の要件の明確化及び手続の整備や、団地型マンション等の建替えの円滑化の措置が講じられた。今後は、マンション建替えに関する情報提供等の支援体制の整備等に取り組み、マンションの建替えの一層の円滑化を図ることとしている。

 
図表II-5-1-4 マンションストックの推移

マンションストックは年々増加しており、平成14年には、約427万戸と推計される。
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6)既存オフィスの住宅への転用
 都心部等を生活拠点として生活するニーズの高まり等に呼応して、良質な賃貸住宅の供給を推進することが求められている。このため、既存ストックの有効活用による効率的な供給にも対応するため、既存建築ストックの都市型住宅への転用に対する補助及び税制等による支援、設計施工指針の作成等の措置を講じ、既存オフィスビル等の住宅への転用を支援している。

 

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