第II部 国土交通行政の動向 

(3)良質な持家取得の促進

1)住宅金融
 住宅金融公庫は、これまで国民の住宅取得を支援するため、長期・固定・低利の資金の融資を公平かつ安定的に供給してきたところである。また、居住水準の向上や耐久性、バリアフリー、省エネルギー性能を備えた良質な住宅ストックの形成の上でも、公庫融資は、大きな役割を果たしてきた。
 平成13年12月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」の趣旨を具体化するため、第156回国会で成立した「住宅金融公庫法及び住宅融資保険法の一部を改正する法律」が15年6月に公布・施行された。同法においては、公庫が民間金融機関による長期・固定金利の住宅ローンの供給を支援する証券化支援事業を行うために必要な措置を講ずるとともに、同法の附則において、19年3月31日までに、別に法律で定めるところにより、公庫を廃止し、公庫の権利及び義務を承継する独立行政法人を設立すること、また、当該独立行政法人には公庫が行う証券化支援事業の実施状況、一般の金融機関の住宅資金の貸付け状況等を勘案し、必要な業務を行わせること等が定められたところである。
 こうした改革の中で、公庫については、民間金融機関が貸し出した長期・固定金利の住宅ローンについて、公庫がこれを買い取り、信託した上で、債券の発行を行う証券化支援事業(買取型)を平成15年10月から開始したところであり、15年度は2,000億円の買取規模としており、93の金融機関(16年1月現在)が参加している。また、公庫の住宅融資保険が付保された長期・固定金利の住宅ローンを担保として、民間金融機関が発行する債券等に対して、公庫が元利払い保証を行う証券化支援事業(保証型)を16年度から開始する予定である。
 また、合理化計画に基づき段階的縮小中の公庫の直接融資については、平成15年度は37万戸の貸付枠をもって、国民の住宅取得を支援しているところである。

 
図表II-5-1-6 証券化支援事業(買取型・保証型)スキーム図

住宅金融公庫が行う住宅ローンの証券化支援業務には、民間金融機関が貸し出した長期・固定金利の住宅ローンについて、公庫がこれを買い取り、信託した上で債券の発行を行う買取型と、公庫の住宅融資保険が付保された長期・固定金利の住宅ローンを担保として、民間金融機関が発行する債券等に対して、公庫が元利払い保証を行う保証型がある。買取型は平成15年10月より開始されており、保証型は平成16年度から開始する予定である。

2)住宅税制の充実
 (ア)住宅ローン減税制度
 無理のない負担での住宅取得を支援するとともに、良質な住宅ストックの形成及び裾野の広い経済波及効果を有する住宅投資の促進による景気の下支えを図るため、住宅の購入、新築及びリフォーム等に係る借入金についてその一定割合を所得税額から控除する措置を講じている。なお、平成16年度税制改正においては、現行制度を1年間延長するとともに、平成17年分以降については、下表のとおり、平成20年までの間に、税額控除期間10年は維持しつつ、中堅層に見合ったローン水準を満たす制度への重点化を進める。

 

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 (イ)居住用財産に係る譲渡損失の繰越控除制度
 資産デフレが継続する中、生活の状況に応じた適切な住替えを支援するため、居住用財産の買換え等に伴い発生した譲渡損失について、翌年以後3年間の各年分の総所得金額等からの繰越控除を認める措置を講じている。
 平成16年度税制改正において、譲渡資産に係る住宅ローン残高が無い場合も適用対象に加えるとともに、適用期限を3年延長することとしている。また、個人が居住用財産で保有期間が5年を超えるものを譲渡(16年1月1日から18年12月31日まで)した場合において譲渡損失が発生した時は、当該譲渡資産に係る住宅ローン残高から譲渡価額を控除した額(住宅ローン残高−譲渡価額)を限度として、その年の他の所得との損益通算及び翌年以後3年間の各年分の総所得金額等からの繰越控除を認める制度を新たに創設することとしている。
 (ウ)住宅取得資金等の贈与に係る特例措置
 住宅の取得に必要な自己資金の不足を補うことにより、良質な持家の取得を促進するとともに、ゆとりある良好な住宅ストックの形成を図るため、住宅取得資金等の贈与に係る贈与税の特例措置を講じている。
 平成15年度税制改正において、相続時精算課税制度の中で住宅取得等資金の贈与に係る特例が創設されたところであり、住宅取得資金の一件あたりの贈与金額が増大する等の効果が表れている。

 

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