第II部 国土交通行政の動向 

第1節 経済の活性化

1.需要喚起のための取組み

(1)不動産市場の活性化

1)土地市場の条件整備の推進
 実需中心の市場へと変化し、ニーズが多様化している土地市場において、土地の有効利用を進めるためには、土地利用に関する計画を前提に、市場機能の向上を図り、土地取引の円滑化や公正さの確保を図るための条件整備を行うことの重要性が高まっている。平成15年12月、国土審議会土地政策分科会において、「土地情報の積極的提供」および「不動産鑑定評価制度の充実」を主な内容とする「土地市場の条件整備の推進について」の建議をとりまとめた。
 (ア)土地情報の積極的提供
 土地市場において、取引価格に関する情報等を整備し適切に提供していくことが、土地政策の重要な課題である。建議では、物件が特定できないように配慮した情報提供が、現時点では最も国民の理解が得られやすい方法であること、情報収集に当たっては国民に過度の負担とならないよう登記制度との連携を図ること等が提言された。今後、この建議の考え方を受け、必要な取組みを行っていく予定である。
 (イ)不動産鑑定評価制度の充実
 不動産鑑定評価がニーズの変化に的確に対応し、社会で期待される役割を果たしていくため、不動産鑑定士の資格取得制度の見直し等を通じて高い専門性を持った不動産鑑定士を確保していくこと、コンサルティング等隣接・周辺業務の制度的位置付け等を通じて多様なサービスを提供できる不動産鑑定業の確立に取り組むべきことなどが提言された。これを受け、所要の法律案を第159回国会に提出したところである。

2)不動産情報提供の充実
 近年、消費者に対するインターネットを利用した不動産情報の提供が発展する中で、平成15年10月には、消費者の利便性を一段と向上させるため、不動産業界が一体となって物件情報及び有益情報をワンストップで幅広く提供する不動産統合サイト(不動産ジャパン:www.fudousan.or.jp)が開設され、国土交通省としてもこの取組みを支援している。
 また、不動産取引の適正な価格形成に資するため、指定流通機構(レインズ)(注)では平均取引価格等の市況情報を公開しており、年々その充実が図られている。

3)不動産証券化の一層の推進
 不動産証券化は、約1,400兆円といわれる個人金融資産を、「市場の萎縮」と「買い手の不在」に直面する不動産市場に呼び込み、「強力な買い手」を創出し、不動産市場の活性化を促進するものであり、土地の流動化、経済活性化のために不可欠である。
 Jリート(不動産投資法人)、不動産特定共同事業、特定目的会社(SPC:Special Purpose Company)等の実績を合わせた不動産証券化の市場規模は、平成13年度末には6兆2千億円、14年度末には9兆円と、順調に拡大している。

 
図表II-6-1-1 不動産証券化スキーム図

不動産証券化には、Jリート、不動産特定共同事業、特定目的会社によるものがある。Jリートは、投資家から資金を集め、運用会社が投資法人や信託銀行から一任を受け、不動産等で運用する仕組みである。不動産特定共同事業は、複数の投資家から出資を受け、不動産会社等が不動産事業を行い、生じた利益を投資家に配分する仕組みである。特定目的会社は、特定の不動産を証券化し、その資産を管理・運営し、投資家に配当する仕組みである。

 (ア)Jリートの組成の推進
 Jリートは、株式や他の金融商品と比べてミドルリスク・ミドルリターンの新しい商品で、超低金利下の運用難の状況において、投資の多様化にも寄与するものとして期待されており、平成13年9月の2法人のJリートの上場以降、16年2月末現在、11法人のJリートが東京証券取引所に上場している。
 平成16年2月末現在、約192万口、約1兆800億円の不動産投資証券が流通しており、不動産投資証券を発行しているJリートにより取得された総資産の額は、非上場も含めて約1兆4,800億円となっている。
 (イ)Jリートの市場拡大のための課題と対策
 Jリートは、新しい金融商品であるため、知名度が低く、金融と不動産の両面を持つ商品であるため、投資家にとって理解しにくいといった指摘があり、官民一体となった投資家に対するきめ細かな普及・啓発活動を実施し、投資家に対するJリートの知名度・理解度の向上を図る必要がある。
 また、投資家のための情報基盤の不足も指摘されており、Jリートの収益率や商品特性等が一覧性のある形で分かるようなJリートに関するインデックス指標等の整備を促進する必要がある。
 税制面においては、平成16年度税制改正において、Jリート等が不動産を取得しやすい環境を整備する観点から、Jリート及びSPC等に係る登録免許税の特例措置の延長及びJリートのSPC優先出資証券保有制限の緩和が行われることとなり、今後、Jリート等による不動産の取得が一層促進されるものと期待される。

4)土地・住宅税制の活用
 土地需要の喚起を通じた土地の流動化・有効利用の促進を図るとともに、資産デフレを克服し経済の再活性化を図るため、平成16年度の税制改正においては、土地の譲渡益課税の税率の引下げ等、商業地等の土地に係る固定資産税の減額を可能にする仕組みの創設などの措置を講じることとしている。
 また、無理のない負担での住宅取得を支援するとともに、良質な住宅ストックの形成及び裾野の広い経済波及効果を有する住宅投資の促進による景気の下支えを図る観点から、住宅ローン減税制度の延長・重点化及び居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度を拡充・創設する措置を講ずることとしている。


(注)宅地建物取引業者が指定流通機構に物件情報を登録し、業者間で情報交換を行う仕組み。取引の相手方を広く探索でき、迅速、透明な不動産取引が可能となる。

 

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