第II部 国土交通行政の動向 

第6節 産業の再生・活性化

1.交通産業の動きとその活性化策

(1)鉄道の動向

1)鉄道事業の動向
 平成14年度の鉄道旅客輸送については、13年度で前年度比プラスであったところ、再びマイナスに転じる結果となった。JRについては、14年12月の東北新幹線盛岡・八戸間の開業にともなう「はやて」の運行開始により東北新幹線は増加したが、JR全体としては、減少に転じている。またJRを除く民鉄については、定期旅客の落ち込みが顕著であり、全体としても減少に転じている。これは少子高齢化や景気の低迷による雇用調整等によって、定期旅客からパスネット等の定期外旅客へのシフトが続いていることが理由として考えられる。鉄道貨物輸送については、14年度は下半期に紙パルプ、特積貨物等の増によりコンテナ貨物の輸送量が前年度を上回ったが、上半期において景気低迷の影響から、コンテナ、車扱とも低調であったため、全体では輸送トン数は減少、輸送トンキロ数は横ばいとなっている。
 一方、交通運輸分野における規制緩和が進む中、各鉄道事業者によるサービス改善への取組みが行われている。
 さらに、視覚障害者誘導システムの試行や女性専用車両の導入を拡大するなど、障害者や女性に配慮した取組みも行われている。また、鉄道貨物輸送においても、荷主ニーズに対応するための情報システムの整備や、コンテナ列車の速達化を図るため、効率的にコンテナの積降ろしができる貨物駅の整備等の取組みが行われている。

2)JRの完全民営化に向けた取組み
 昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により誕生したJR各社については、累次の閣議決定により「できる限り早期に純民間会社とする」ことが求められていた。このうちJR東日本、JR東海及びJR西日本のJR本州三社については、発足後の安定的な経営状況や上場後の堅調な株価の推移等から、純民間会社とするための条件が整ったと言える状況に至ったことから、JR会社法の一部改正により、平成13年12月、JR会社法の適用対象から除外された。なお、適用対象からの除外にあたっては、JR各社が一般の民営鉄道会社とは異なり国鉄改革の中で誕生したという経緯を踏まえ、新たに指針制度を設け、当分の間、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するための措置がとられている。
 また、日本鉄道建設公団(平成15年10月より鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が保有するJR本州三社の株式については、JR東日本株式、JR西日本株式、JR東海株式がそれぞれ上場され、14年6月には、JR東日本株式について売却が完了した。JR西日本株式及びJR東海株式の未売却分についても、株式市場の動向等を踏まえ、順次売却する予定である。
 JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、経営基盤の確立等完全民営化のための諸条件の達成に向け、増収努力や経費節減等の取組みが行われているところである。

 

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