第II部 国土交通行政の動向 

(3)地震対策

1)住宅・建築物の耐震・安全性の向上

 阪神・淡路大震災においては、建築物に多数の被害が生じ、特に、昭和56年以前に建築された現行の耐震基準を満たさない古い建築物の被害が顕著に見られた。このため、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」に基づき、耐震診断及び耐震改修の指針の策定、地方公共団体による計画策定等を行うとともに、各種助成制度等により、耐震改修を促進している。特に、多数の死者発生の原因となった住宅について、平成14年度に30,119戸の耐震診断補助を行ったほか、住宅の耐震改修に対する補助、税制上の特例措置、住宅金融公庫融資等の活用により、耐震化の一層の推進を図っている。また、平成15年(2003年)十勝沖地震では、空港ターミナルビル等の天井が崩落する被害が生じたため、現地調査を行い、関係機関等に対し再発防止のための技術上の留意点を周知徹底した。

2)被災建築物の応急危険度判定の実施
 地震により被災した建築物の余震等による倒壊等から生じる二次被害を防止するため、被災後速やかに応急危険度判定を実施できるよう、業務マニュアルの整備や全国連絡訓練等により都道府県と協力して体制整備を図っており、平成15年7月の宮城県北部の地震では、7,245戸について応急危険度判定を実施するなど、積極的に活動を展開している。

3)オープンスペースの確保
 都市の防災機能の向上により安全で安心できる都市づくりを図るため、地震災害時に復旧・復興拠点や復旧のための生活物資等の中継基地等となる防災拠点、周辺地区からの避難者を収容し、市街地火災等から避難者の生命を保護する広域避難地、及び地域周辺の集結場所や消防救護活動の拠点等として機能する一次避難地となる防災公園等の整備を推進している。
 また、大都市圏等において、先行取得した防災公園予定地に防災施設を機動的に整備する「防災緑地緊急整備事業」ならびに防災公園と周辺市街地の整備改善を一体的に実施する「防災公園街区整備事業」を推進している。

4)総合的な耐震安全性を確保した防災拠点施設の整備の推進
 「国家機関の建築物及び附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準」(平成16年改正)及び「官庁施設の総合耐震計画基準」(8年制定)に基づき、建築物の構造体のみならず建築非構造部材、建築設備等を含め建築物全体としての総合的な耐震安全性を確保し、防災拠点施設となる官庁施設の新営及び既存施設の耐震改修を推進しており、15年度は、外務省庁舎の耐震改修を引き続き実施し、新たに徳島第1地方合同庁舎ほか4施設について耐震改修を実施している。

5)構造物の耐震性向上
 (ア)河川事業における耐震性対策
 河川堤防耐震点検マニュアル等に基づき点検を行い、河川堤防等が被災した場合に浸水被害が生じないよう、平成14年度は要対策区間のうち筑後川等で約16km耐震対策を実施している。
 (イ)道路事業における耐震性対策
 道路防災総点検等に基づき緊急輸送道路における橋梁等の耐震補強を実施している。平成15年度は一般国道43号芦屋川橋等で耐震補強を実施している。
 (ウ)港湾事業における耐震性対策
 大規模災害時に、発災直後から復旧完了に至るまで、一定の幹線貨物輸送(国際コンテナ貨物、幹線フェリー等)を確保するとともに、臨海部防災拠点として避難者や緊急救援物資用の輸送拠点となる耐震強化岸壁(平成15年3月末現在140バース供用)、緑地等のオープンスペースの整備を推進している。さらに、地域の実情に応じて、これらを補完するものとして、被災地に曳航し、救急・救援活動の拠点となる浮体式防災基地を東京湾、伊勢湾、大阪湾、室蘭港に配備している。

 

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