第II部 国土交通行政の動向 

(3)自動車安全対策

1)事業用自動車の安全対策
 事業用自動車の交通事故件数は、平成12年以降は横ばい傾向にあるものの、年間約6万6千件(平成14年)発生しており、事業用自動車に係る交通事故防止は緊急の課題となっている。
 このため、貨物自動車運送事業については、15年4月の貨物自動車運送事業法の改正施行に伴う営業区域規制の廃止に対応し、運行管理体制の強化を図るため、貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正を行っており、運転者に対する点呼の強化、運行指示の徹底及び運行期間の制限等を実施している。
 また、バスの運転者による酒気帯び運転が連続して発生したことを受け、(社)日本バス協会が策定した「飲酒運転防止対策マニュアル」の一層の具体化、強化を図り、各事業者に飲酒運転防止対策を徹底させることとした。

2)不正改造車の排除
 不正改造車を撲滅するため、不正改造行為の禁止規定の新設及び整備命令制度の強化を図った「道路運送車両法の一部を改正する法律」が平成15年4月から一部施行された。なお、15年6月の「不正改造車を排除する運動」強化月間中に行った街頭検査において、前年度比で約1.5倍の不正改造車等に整備命令を発令している。

3)車両安全対策の推進
 高速道路での大型トラックによる悲惨な事故を減らすためのスピードリミッター(速度抑制装置)の装着義務付け、歩行者の死者数を減らすためのボンネットの衝撃緩和基準の策定など安全基準の拡充・強化を行った。また、シートベルト非着用警報、固定機能付きチャイルドシート、歩行者脚部傷害軽減ボディ及び車両前面突入軽減装置について基準化作業を進めている。今後は、高齢者及び大型車の交通安全対策について重点的に取り組むとともに、「シートベルト着用推進キャンペーン」を関係機関と協力してより一層進めていく。

4)リコール制度
 近年、自動車製作者によるリコール(回収・無償修理)業務の不正事案が相次いで発生したため、平成14年7月には道路運送車両法の一部が改正され、リコール命令規定の導入・罰則の強化(15年1月施行)及び自動車使用開始後にユーザーが取り付けた後付装置リコール制度の創設(タイヤ及びチャイルドシートについて16年1月施行)が行われた。

5)自動車アセスメント
 自動車等の安全性能について試験による評価を行い、公表することによって、利用者の安全な車選びや製造者のより安全な自動車の開発を促進し、安全な自動車の普及を図る自動車アセスメントを推進している。平成14年度までに衝突安全性能の総合評価を実施した自動車は65車種となり、国内新車販売台数の約8割をカバーしている。15年度は、歩行者頭部保護性能試験を新たに追加して評価することとした。また、チャイルドシートについても安全性能試験を行い、14年までに新基準適合品(欧州・米国基準を含む)24機種について評価を実施した。

 
図表II-7-3-3 自動車アセスメントによる効果

自動車アセスメントによる情報提供によって、エアバッグ、アンチロックブレーキシステムの装備率が上昇することで、自動車の衝突安全性能は確実に向上している。平成7年末のエアバッグの装備率について運転者席及び助手席がそれぞれ3割と1割程度であったのに対し、平成14年末にはともに10割近くになっている。。また、運転席及び助手席における、頭部傷害値の改善状況については、平成7年と14年を比較すると改善率は4割以上上昇し、胸部傷害値の改善状況については、改善率は2割程度上昇している。
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6)自動車整備士技能検定の試験問題漏洩対策
 平成15年に実施した一級小型自動車整備士技能検定筆記試験問題の一部が事前に漏洩した問題については、当該漏洩に関与した検定専門委員の解任、他の検定専門委員に対する守秘の徹底等の措置を講じた。また、更なる再発防止対策として、検定専門委員の任命方法の見直し等を実施した。

 

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