第II部 国土交通行政の動向 

(3)モーダルシフト推進を始めとする物流の効率化等

 現在、国内物流における輸送機関分担率では自動車が最大であり、50%を超えている。しかしながら、トラックの排出原単位(1トンキロ輸送あたりに排出する二酸化炭素の量)は、大量輸送機関である鉄道・内航海運に比して大きく、貨物輸送部門の輸送機関別CO2排出割合においても、全体の約9割を占めている。国内物流を支え、かつCO2の排出を抑制するためには、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せて、輸送効率性にも配慮しつつ、鉄道・内航海運等、単体のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。
 国土交通省では、平成15年5月に「モーダルシフト促進に向けた平成15年度アクションプログラム」を策定し、鉄道及び内航海運の抱えるボトルネックの解消や荷主・物流事業者の意識向上のための施策等を推進している。

 
図表II-8-2-5 貨物輸送機関の二酸化炭素排出原単位(平成13年度)

貨物輸送機関について1トンの荷物を1キロメートル運ぶのに排出する二酸化炭素の量は、自家用小型車が3,271グラムで最高値であり、鉄道が21グラムと最も少ない値となっている。
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 具体的には、鉄道においては、山陽線の輸送力増強事業の推進や、電車型特急コンテナ列車(スーパーレールカーゴ)の導入支援等により利便性向上を図っている。内航海運においては、次世代内航船(スーパーエコシップ)の開発、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備、RORO船等の建造促進等を行っているほか、規制の見直しを行い活性化を図るため、第159回国会に「海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案」を提出したところである。さらに、荷主・物流事業者のモーダルシフトに対する意識の向上を促すため、「環境負荷の小さい物流体系の構築を目指す実証実験」として、鉄道・海運へのモーダルシフトやトラック輸送の共同化といった、幹線物流における環境負荷低減に資する取組みを行う事業者に対し、費用の一部を補助する制度を実施している。

 
図表II-8-2-6 国内貨物輸送量の推移

国内貨物輸送量は、昭和40年約26億トン、平成3年約69億トン、平成13年約62億トンとなっており、そのうち、平成13年では自動車が53.9%、内航海運が42.1%、鉄道が3.8%、航空が0.2%の割合を占める。
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 平成15年度においては、東京−鹿児島間の宅配貨物輸送をこれまでのトラック輸送から鉄道輸送に転換する取組みや、岡山−神戸間の化学製品輸送をトラック輸送から海運利用に転換するなどの取組みを支援している。また、中国運輸局が主宰する中国モーダルシフト推進協議会では、岩国から東京までの貨物をトラックから鉄道へシフトした日本製紙(株)岩国工場をはじめ、荷主企業5社を表彰したところである。これに加え、地方運輸局等においては、「地方モーダルシフト等事例公表制度」を開始し、モーダルシフト等CO2削減に資する取組みを行う事業者を広く公表していくこととしている。さらに、(社)日本物流団体連合会で実施している「モーダルシフト取組優良事業者公表制度」など業界団体の取組みについて後押しするほか、国土交通省と事業者団体が協力して「モーダルシフト促進キャンペーン」を実施するなど、あらゆる面から荷主等のモーダルシフトに対する意識向上に努めている。
 このほかの物流の効率化については、車両の大型化やこれに伴う橋梁の補強を行うとともに、国際海上コンテナターミナルの整備を推進し、CO2の削減に取り組んでいるところである。

 
図表II-8-2-7 モーダルシフト化率の推移

モーダルシフト化率は、昭和63年33.4%が底で、平成8年には43.4%とピークを迎え、平成13年では38.6%と推移している。
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図表II-8-2-8 環境負荷の小さい物流体系の構築を目指す実証実験

荷主や物流事業者等の関係者が共同して取り組む実証実験について支援している。それは、幹線輸送において、トラックから鉄道・海運に転換するパターン、低公害車で共同輸送するパターン、新技術により環境負荷を低減させるパターンがある。

 

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