第II部 国土交通行政の動向 

コラム・事例 環境負荷の小さい物流体系の構築を目指す実証実験

 環境保全意識の高まりなど社会の価値規範が変化する中で、物流分野においても、そうした変化を先取りし、輸送に起因する環境負荷の低減策として、鉄道、海運の活用(モーダルシフト)やトラックの共同化に積極的に取り組んでいる事業者がいます。そうした動きを促進するため、国土交通省でも、輸送方法転換のために荷主と物流事業者が共同で行う実証実験を支援する制度を平成14年度から導入しています。平成15年度も、例えば鹿児島−東京間の宅配便をトラックから鉄道に転換するなど、バラエティに富んだ30件以上の実験が新たに開始されたところです。

 

 これらの実験を見ると、トラック輸送を鉄道輸送に転換する内容のものが多くなっています。下図は、鉄道利用に転換する典型的な事例ですが、長距離雑貨輸送を鉄道に転換するため、列車増便や荷役設備の充実を図ります。このほか、これまで10トントラックで運んでいた貨物をそのまま鉄道に載せかえるイメージで、自社専用の31フィートコンテナや20フィートコンテナを新たに製作する例が目立ちます。また、長距離区間を大規模に輸送する場合に鉄道や海運を活用することを内容とする実験ばかりではなく、100km前後の短距離区間で取り組む実験や、小規模事業者が小ロット貨物を扱う実験も含まれています。各社とも、積み替え時の荷役作業や輸送時の品質管理等に独自の工夫を凝らすことで、輸送方法のスムーズな転換を実現しようとしています。なお、これら平成15年度分の実験事業が全て計画どおりに実行されると、年間でCO2排出量を約3.5万トン削減することとなります。

 

 こうして蓄積される先進事例は、他の事業者が環境負荷低減を図るための参考として活用されます。こうした成功事例が成功事例を生み、モーダルシフトや効率化の流れを加速させるきっかけとなることが、この補助制度では期待されています。

 


 

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