第II部 国土交通行政の動向 

第4節 豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり

1.豊かな河川環境の形成

(1)良好な河川環境の保全・形成

 河川整備にあたっては多自然型川づくりを基本としており、必要とされる治水上の安全性を確保しつつ、生物の良好な生息・生育環境をできるだけ改変しないようにし、改変せざるを得ない場合においても最低限にとどめることとして、良好な河川環境の保全が可能となるように努めている。また、堰、床止、ダム等の河川横断施設については、魚道の設置や改善などにより魚介類の河川上下流の遡上・降下環境の改善を積極的に行っている。
 さらに、平成14年12月には自然再生推進法が成立するとともに、国土交通省では、多様な自然環境を有する本来の川の姿を戻すため、14年度に自然再生事業を創設し、礫河原の復元や湿地の再生等を釧路川、荒川等全国24箇所において科学的知見に基づき推進している。

 
<多自然型川づくり(八東川、鳥取県八頭郡若桜町)>



 
<干潟再生の例(荒川下流、東京都)>



 一方、生物多様性を保全する上で大きな脅威の一つとなっている外来種は全国の河川での生息域が拡大しており、各地で生態系への影響等が問題となっている。このため、生態学の専門家等で構成される外来種影響・対策研究会を設置して検討を重ね、平成15年8月には、河川で問題となっている主な侵略的外来種10種を取り上げ、それらに対する全国の取組事例をまとめて「河川における外来種対策の考え方とその事例」として発行し、各地で取り組んでいる外来種対策に役立てている。
 以上の施策を進めるにあたっては、河川工学や水質のみならず、生物学や生態学など様々な分野の専門家と連携して、河川の物理的環境と生物の生息・生育環境との相互関係など未解明の部分を明らかにしていくことが重要であることから、河川水辺の国勢調査をはじめとした様々な調査を行うとともに、河川生態学術研究及び世界最大級(延長約800m)の実験水路3本を有する自然共生研究センターでの取組みなど、学識経験者や各種機関と連携して、様々な研究が行われている。

 

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