第I部 東アジアとの新たな関係と国土交通施策の展開 

第1節 東アジアとの関係深化を踏まえた取組み

1 増大する人流・物流に対応した交流基盤の強化

 東アジアでは今後も成長が続くことが見込まれ、こうした中で、製造業の生産分担関係の構築のみならず、サービス業の進出、所得水準の向上に伴う日本への観光客の増加、豊富な資産と自由時間を有する高齢者の増加等による日本からの観光客の増加、文化面での交流の進展など、東アジアとの相互依存関係のさらなる深化やこれに伴う人流・物流の増大が見込まれる。
 国境を越えた機能分担による企業立地の展開など東アジアとの関係の深化は、企業の国際的なサプライチェーンマネジメント(SCM)の構築をはじめ、東アジアが地域として一体的な圏域となっていくことを意味している。このため、国内と比べても遜色のない円滑・緊密な交通ネットワークを東アジアにおいて構築していくことが重要となっている。
 一方で、東アジアの成長により、東アジアと日本との競争が激しさを増すことも見込まれる。このため、東アジアと日本との円滑な人流・物流を確保するとともに、東アジアにおける交通ネットワークの拠点としての地位を確保することは、我が国における企業活動にとって不可欠であり、観光地としての競争力増大を阻害しないためにも重要である。
 また、大都市圏のみならず地方部においても、近隣諸国の地域との国際的な連携の強化など、関係の深化が見られる。東アジアとの関係の深化を踏まえ、地域の特色に応じた関係を構築することが求められてくるとともに、そうした特色に合わせた国内外の交通ネットワークを充実させていくことが重要となる。
 周囲を海に囲まれた島国である我が国では、海外との接点は空港や港湾に限られることとなるが、東アジアをはじめとする近隣との連携・交流が国内各地で進められていく時代にあっては、国内の交通ネットワークについても、海外へとつながるネットワークの一部を構成するという認識をもって、国内の各地から東アジアの各地へとつながる総合的な交通ネットワークとして構築していくことが必要となってくる。

 日本を含む東アジアが一体的な圏域として社会経済活動の場となっていく中で、我が国が東アジアにおける中心的な役割を果たしていくためには、東アジアにおける交通ネットワークの拠点としての地位を確保していくことが重要である。しかしながら、航空ネットワークについては既に容量の限界が見込まれているものがあるなど、国内の航空ネットワークと同様の密度の高いサービスを提供する上での課題が存在している。
 このため、1)海外との接点における容量を拡大するための、大都市拠点空港、中枢港湾の整備、2)接点と海外とを結ぶ航空路の容量の拡大、3)国内の交通ネットワークと、国際空港・港湾へのアクセス(接続)や乗継ぎにおける利便性の向上等を進めていく必要がある。
 こうした交通ネットワークの構築を推進していく上では、事業評価の厳格な実施、社会経済情勢の変化を踏まえたより精緻な需要予測の実施、ソフト施策等による既存施設の有効活用など、重点的、効果的かつ効率的に実施していかなければならない。

 特に、物流について見ると、東アジアと日本との間での物流が増大している中で、日本を含む東アジアを一体的な圏域とした円滑な物流を実現していくためには、国際物流のコスト及びリードタイムを国内物流の水準に可能な限り近づけ、国内物流と遜色のない国際物流を実現することが求められる。また、国際物流コストの高さが企業立地における障害ともなり得ることからも、国際物流の水準の向上が重要となる。
 こうしたことから、ネットワークの機能を最大限に活用できるよう、空港・港湾におけるワンストップサービス、IT化、24時間運用等について、関係省庁と連携しつつ取り組んでいくなど、手続の簡素化・効率化や運用改善等により、コストの低減及びリードタイムの短縮を図る必要がある。

 

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