第4節 国際的に競争力のある水準の物流市場の構築
1 国際物流機能強化のための施策
(1)海上ハイウェイネットワークの構築
我が国においては、アジア諸国の経済力の向上、国際的な水平分業の進展により、アジア諸国との相互依存関係が強まる中で、対アジア輸送の重要性が増大している。また、在庫コストの削減等新たな企業ニーズに応えるため、物流サービスの多頻度かつ迅速な展開がますます重要になっている。
しかしながら、我が国の海上輸送の現状をみると、アジアの主要港が中継コンテナを積極的に取り込むことにより(注1)コンテナ取扱量を飛躍的に増加させている中で、大型コンテナ船に対応するための岸壁の大水深化の遅れ、港湾サービスの競争力の相対的低下等により、欧米との長距離幹線航路(基幹航路)の日本への寄港数は減少傾向にある。
我が国港湾の国際競争力を回復させ、経済の活性化に資するためには、荷主の高度なニーズに対応した物流サービスの提供を可能とするための施策を総合的に展開していくことが必要である。
このため、ハード及びソフトの施策を有機的に組み合わせた、船舶航行の安全性及び海上輸送の効率性が両立した海上交通環境としての海上ハイウェイネットワークの構築を図っていく。
図表II-5-4-1 海上ハイウェイネットワークの構築
1)国際幹線航路の整備
座礁をもたらす危険のある浅瀬等の存在により船舶航行のボトルネックとなっている国際幹線航路において、浅瀬を撤去すること等により、船舶航行の安全性及び安定性の確保並びに高速化を図っている。特に、首都圏の経済活動のみならず国民生活を支える東京湾の海上輸送の安定化に資するため、東京湾口航路の整備を重点的に進めている。
2)湾内航行のノンストップ化
新たな湾内交通体系を検討して航行規制を見直すなどのソフト施策、及び船舶自動識別装置(AIS)を活用した次世代型航行支援システムの整備等のハード施策を有機的に組み合わせることによる湾内航行のノンストップ化を推進している。
3)中枢・中核国際港湾等の整備
国際海上コンテナ輸送の増大及び船型の大型化に対応して、国際海上ネットワークの拠点となる中枢国際港湾(注2)及びこれを補完する中核国際港湾(注3)における国際海上コンテナターミナルを整備するとともに、バルク貨物(注4)の安定的かつ低廉な輸送を確保するために多目的国際ターミナル等の整備を進める。整備に当たっては、老朽化した民間施設の再編等、既存ストックの有効活用を促進する。これらにより、我が国・地域経済の再生及び国際水準の港湾コスト・サービスを実現する国際海上物流拠点の形成を図る。
4)港湾の24時間フルオープン化の推進
港湾の24時間フルオープン化については、平成13年11月の港運労使間の合意に基づき、
(ア)荷役作業については、1月1日を除き364日24時間実施
(イ)ゲート作業については、土・日・祝日も平日と同様に8:30〜20:00まで実施
されることとなった。
また、コンテナターミナルゲートの24時間フルオープン化の実現に向け、平成14年度に横浜港において実証実験が実施されたのに続き、15年度には、大阪港と名古屋港において実証実験が実施された。
こうした動きを受け、平成15年7月から国内の14港において税関の執務時間外における通関体制が本格実施されている。また、16年7月からは国内主要7港において、動植物検疫の執務時間が延長されている。
(注1)シンガポール港では取扱コンテナ個数(TEU)の8割、高雄では5割がトランシップ(中継コンテナ)
(注2)東京湾、伊勢湾、大阪湾及び北部九州の4地域
(注3)北海道、日本海中部、東東北、北関東、駿河湾沿岸、中国、南九州及び沖縄の8地域
(注4)穀物、石炭、鉱石などのように、粉粒体のまま包装せずに積み込まれる貨物のこと。ばら積み貨物とも言われる。