第II部 国土交通行政の動向 

第5節 産業の再生・活性化

1 交通産業の動きとその活性化策

(1)鉄道の動向

1)鉄道事業の動向
 平成15年度の鉄道旅客輸送については、少子高齢化の進展など厳しい事業環境の中、前年度に比べ増加し、改善の傾向が見られた。JRについては、15年10月1日の東海道新幹線品川駅開業に伴うダイヤ改正等による新幹線輸送の好調等により増加している。またJRを除く民鉄については、定期旅客は引き続き減少しているが、定期外旅客が増加しているため、全体としては増加している。
 鉄道貨物輸送については、平成15年度は、年間を通じて特積貨物(注1)の輸送が好調に推移するとともに、下半期における政府備蓄米の緊急輸送があったこと等から、コンテナ貨物の輸送トンが前年度を大きく上回った。車扱(しゃあつかい)(注2)を含めた全体の輸送トンキロも前年度を上回っている。
 一方、交通運輸分野における規制緩和が進む中、各鉄道事業者によるサービス改善への取組みが行われている。ICカード乗車券については、JR東日本の「Suica」が平成16年10月に1,000万枚を達成するなど、急速に普及しているが、さらに今後は共通化・相互利用化を進めていく必要がある。16年8月に、関西圏の「スルッとKANSAI協議会」の一部事業者間で「PiTaPa」が導入されたほか、「Suica」とJR西日本の「ICOCA」が相互利用を開始している。また、東京メトロのサービスマネージャーの設置等に見られるように鉄道に不慣れな利用者への情報案内サービスも進んでいる。また、鉄道貨物輸送においても、荷主ニーズに対応するための情報システムの整備や、コンテナ列車の速達性を図るため、効率的にコンテナの積み卸しができる貨物駅の整備等の取組みが行われている。

2)JRの完全民営化に向けた取組み
 昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により誕生したJR各社については、「できる限り早期に純民間会社とする」ことが求められていた。このうちJR東日本、JR東海及びJR西日本のJR本州三社については、既に「旅客鉄道会社および日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR会社法)」の適用対象から除外されている。ただし、JR各社が一般の民営鉄道会社とは異なり国鉄改革の中で誕生したという経緯を踏まえ、当分の間、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するための措置がとられている。
 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有するJR本州三社の株式については、平成14年6月にはJR東日本株式の、16年3月にはJR西日本株式の売却が完了した。JR東海株式の未売却分についても、株式市場の動向等を踏まえ、売却する予定である。
 JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、経営基盤の確立等完全民営化のための諸条件の達成に向け、増収努力や経費節減等の取組みが行われている。


(注1)宅配荷物や雑貨などの小口貨物を集荷した運送事業者を荷主として取り扱う貨物
(注2)貨車を1車貸し切って輸送する方式であり、特に大量輸送の石油などの産業物資輸送に力を発揮している。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む