第II部 国土交通行政の動向 

(4)不動産市場の活性化

1)土地市場の条件整備の推進
 実需中心の市場へと変化しニーズが多様化している土地市場において、土地の有効利用を進めるためには、土地利用に関する計画を前提に、土地取引の円滑化や公正さの確保により市場機能の向上を図ることが重要となっている。平成15年12月、国土審議会土地政策分科会において、土地情報の積極的提供等を主な内容とする「土地市場の条件整備の推進について」の建議を取りまとめた。
 平成16年3月に閣議決定された規制改革・民間開放推進3か年計画を踏まえ、土地市場において取引価格情報等を整備し適切に提供していくことが土地政策の重要な課題であるとの認識から、土地市場の透明化、取引の円滑化・活性化等を図るため、取引当事者の協力により取引価格等の調査を行い、物件が容易に特定できないよう配慮して土地取引の際に必要となる取引価格情報等の提供を行うこととしている。具体的には、16年度に仕組みを構築し、17年度より取引価格情報等の調査・提供を行うこととしている。

2)不動産情報提供の充実
 近年、インターネットにより不動産情報を収集する消費者が増加する中、その利便性を一段と向上させるため、物件情報及び有益情報をワンストップで幅広く提供する不動産統合サイト(不動産ジャパン:http://www.fudousan.or.jp)を不動産業界が一体となって整備しており、国土交通省としてもこの取組みを支援している。
 また、不動産取引の適正な価格形成に資するため、指定流通機構では平均取引価格等の市況情報を公開しており、年々その内容が充実してきている。

3)不動産証券化の一層の推進
 不動産証券化は、約1,400兆円といわれる個人金融資産を、「市場の萎縮」と「買い手の不在」に直面する不動産市場に呼び込み、「強力な買い手」を創出し、不動産市場の活性化を促進するものであり、土地の流動化、経済活性化のために不可欠である。Jリート(不動産投資法人)、不動産特定共同事業、特定目的会社等の実績を合わせた不動産証券化の市場規模は、平成14年度末には約9兆円、15年度末には約12兆7,000億円と、順調に拡大している。

 
図表II-5-5-8 不動産証券化スキーム図

不動産証券化には、Jリート、不動産特定共同事業、特定目的会社によるものなどがある。Jリートは、投資家から資金を集め、運用会社が投資法人や信託銀行から一任を受け、不動産等で運用する仕組みである。不動産特定共同事業は、複数の投資家から出資を受け、不動産会社等が不動産事業を行い、生じた利益を投資家に配分する仕組みである。特定目的会社は、特定の不動産を証券化し、その資産を管理・運営し、投資家に配当する仕組みである。

 (ア)Jリートの組成の推進
 Jリートは、ミドルリスク・ミドルリターンの新しい商品で、超低金利下の運用難の状況において、投資の多様化にも寄与するものとして期待されている。平成16年12月末現在、15法人のJリートが上場(東証14、大証1)し、約255万口、約1兆7,800億円の不動産投資証券が流通している。Jリートにより取得された総資産の額は約2兆800億円となっている。

 (イ)Jリートの市場拡大のための課題と対策
 Jリートは、新しい金融商品であるため知名度が低く、金融と不動産の両面を持つ商品であるため投資家にとって理解しにくいといった指摘があり、官民一体となって投資家に対するきめ細かな普及・啓発活動を実施し、Jリートの知名度・理解度の向上を図る必要がある。
 税制面においては、平成17年度税制改正において、Jリート等が不動産を取得しやすい環境を整備する観点から、Jリート等に係る不動産取得税の特例措置の延長が行われることとされており、今後、Jリート等による不動産の取得が一層促進されるものと期待される。

 (ウ)不動産証券化関連法制の改正
 平成16年の「証券取引法」の改正により、YKTKスキーム(図表II−5−5−8 4)参照)における不動産信託受益権を投資対象とする匿名組合契約に基づく権利がみなし有価証券とされ、一層の投資家保護が図られることとなった。

4)土地・住宅税制の活用
 土地の流動化・有効利用の促進を図るとともに、資産デフレを克服し土地市場の再活性化を図るため、平成17年度の税制改正においては、特別土地保有税に係る徴収猶予制度の見直し、定期借地権の一時金の取扱いの明確化等の措置を講じることとしている。
 住宅税制においては、古い住宅でも良質なものは市場での流通が拡大していること、新耐震基準を満たした良質な住宅取得については新築・中古を問わず同条件で支援すべきであることから、住宅ローン減税等の特例措置の適用上、地震に対する安全基準に適合する中古住宅については、築後経過年数に関する要件にかかわらず、対象に加える措置を講ずることとしている。これにより、中古住宅の流通が促進され、国民がゆとりのある住宅を無理のない負担で取得できることが期待される。

 

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