第II部 国土交通行政の動向 

(2)自動車の総合的な安全対策

1)リコールに係る不正行為再発防止対策の推進及び認証制度のあり方の検討
 今般の自動車メーカーによる悪質なリコール隠し問題等を踏まえ、平成16年6月に、自動車メーカーから定期報告を求めることなどを盛り込んだ再発防止対策を公表するとともに、監査の拡充・強化、情報収集・分析システムの強化、技術的検証スキームの構築を行うリコール改善推進室を設置した。また11月には外部から選定した実務専門家等からなるリコール調査員室を独立行政法人交通安全環境研究所に設置し、リコールの可能性がある案件の洗い出しを行うなどリコールに係る不正行為の再発防止に努めている。
 さらに、「今後の認証制度のあり方検討会」の報告に沿って、リコールに関する不正行為を行った自動車メーカー等に対して型式認証の審査をする際は、1)保安基準適合審査の厳格化、2)不正行為への対応状況等の確認を行うなど、認証制度の厳格化に向けた作業を行っている。

2)事業用自動車の安全対策
 事業用自動車の交通事故件数は、年間約6万4千件(平成15年)であり、事業用自動車に係る交通事故防止は緊急の課題となっている。このため、16年8月に監査方針及び処分基準制度通達の一部改正により自動車運送事業者(旅客・貨物)に対する監査体制の強化を図り、重大事故及び悪質な法令違反を引き起こした事業者等への監査を重点的に実施している。また、事故発生前後の走行情報(前方映像、車両速度、急加減速)を記録するドライブレコーダー(映像記録型)を事業用自動車に搭載することによる事故防止抑制効果等について、16年度より調査・分析を行っている。

3)不正改造車の排除
 不正改造車を撲滅するため、年間を通して「不正改造車を排除する運動」を実施しており、平成16年6月の「不正改造車排除強化月間」には、警察庁及び都道府県警察と連携して全国で172回の街頭検査を行い、不正改造車702台に対して整備命令を発令した。

4)車両安全対策の推進
 歩行者等が死角に入り発生する事故を減らすため、平成17年1月より運転者の視界を妨げる装飾板の装着規制及び乗用車等の運転者の視界基準が適用された。また、自動車との衝突の際に歩行者の頭部が受ける衝撃を少なくして死者数を減らすための歩行者頭部保護基準が17年9月から段階的に適用されるほか、車両総重量7トン未満の普通トラックへの大型後部突入防止装置の義務付け拡大措置も適用される。このほか、固定機能付きチャイルドシート、大型トラックの前部プロテクター等についての基準化作業を進めている。

5)自動車アセスメント
 自動車等の安全性能について試験による評価を行い、公表することによって、利用者の安全な車選びや製造者のより安全な自動車の開発を促進し、安全な自動車の普及を図る自動車アセスメントを推進している。平成15年度までに国内新車販売台数の約8割に当たる79車種に対し衝突安全性能試験を実施するとともに、チャイルドシートについても31機種を対象に安全性能試験を実施した。

 
図表II-6-2-3 自動車アセスメントによる効果

自動車アセスメントによる情報提供によって、エアバッグ、アンチロックブレーキシステムの装備率が上昇することで、自動車の衝突安全性能は確実に向上している。平成7年末のエアバッグの装備率について運転者席及び助手席がそれぞれ3割と1割程度であったのに対し、平成15年末にはともに10割近くになっている。また、頭部傷害値の改善状況については、平成6年式と14年式を比較すると、運転席については4割以上、助手席については5割改善している。胸部傷害値の改善状況については、改善率は2割程度上昇している。
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