第II部 国土交通行政の動向 

第3節 豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり

1 豊かな河川環境の形成

(1)良好な河川環境の保全・形成

 河川整備に当たっては、多自然型川づくりを基本とし、必要とされる治水上の安全性を確保しつつ、生物の良好な生息・生育環境をできるだけ改変しないようにし、仮に改変せざるを得ない場合においても最低限にとどめることとして、良好な河川環境の保全に努めている。また、堰、床止、ダム等の河川横断施設については、魚道の設置や改善などにより魚介類の河川上下流の遡上・降下環境の改善を積極的に行っている。さらに、多様な自然環境を有する本来の川の姿を戻すため、礫河原の復元や湿地の再生等を行う自然再生事業を釧路川、荒川等全国23箇所において科学的知見に基づき推進している。
 一方、生物多様性を保全する上で大きな脅威の一つとなっている外来種は全国の河川での生息域が拡大しており、各地で生態系への影響等が問題となっている。このため、生態学の専門家等で構成される外来種影響・対策研究会を開催して検討を重ね、平成15年8月には、全国の取組事例をまとめて「河川における外来種対策の考え方とその事例」として発行するなど、各地で取り組んでいる外来種対策に役立てている。
 以上の施策を進めるに当たっては、河川工学や水質のみならず、生物学や生態学など様々な分野の専門家と連携して、河川の物理的環境と生物の生息・生育環境との相互関係など未解明の部分を明らかにすることが重要であるため、河川水辺の国勢調査を始めとした様々な調査を行うとともに、河川生態学術研究及び世界最大級(延長約800m)の実験水路3本を有する自然共生研究センターでの取組みなど、学識経験者や各種機関と連携して様々な研究が行われている。
 また、高度経済成長期の急激な都市化等により、河川における水や生物、土砂、物質(栄養塩類)の連続性が大きく改変されてきており、湖沼等の富栄養化、生態系への影響、海岸線の後退など広範囲に影響が及んでいる。このため、現在の治水上や利水上の機能を損なうことなく、河川を軸とした流域全体でこれらの循環や移動を健全化するための検討を行っている。

 
図表II-7-3-1 河川に係る連続性の確保

森・川・海の連続性確保の方策として、水や有機物の安定的な供給、土砂の流出防止に資する森林の整備・保全。適切な流量の維持と、適度な栄養や土砂等の流下に資する河川整備。森・川・海のつながりを海域の生産に有効に活かせる漁場整備が挙げられている。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む