第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

4 孤立集落の発生

 安全・安心の確保について都市部特有の課題がある一方で、都市部以外の地域においても地域特性に伴う課題を抱えている。

 我が国の国土の約7割の面積を占める中山間地域や沿岸地域においては、自然災害が発生した場合、地形条件、交通アクセス等から孤立集落がしばしば発生してきた。
 平成16年10月に発生した新潟県中越地震では、脆弱な地質構造の山間地において多発した土砂災害等により、中山間地域に散在した集落へ至る交通網等が寸断され、新潟県山古志村(現長岡市)を始めとする各地で集落が孤立した。また、17年においても、台風第14号に伴う豪雨により、九州地方の中山間地域で、多数の斜面崩壊や河岸浸食が発生し、道路等の交通網等が寸断し、集落が孤立した。さらに、中山間地域だけでなく、山が海に迫った沿岸部や島しょ部においても、斜面の崩壊、津波等により、他の地域や島外へのアクセスが遮断され、孤立集落が発生してきた。内閣府の調査によると、中山間地の農業集落及び海水面漁業集落のうち、それぞれ約3割の集落で自然災害によって孤立する可能性がある。また、平成18年豪雪によって道路が寸断され、新潟県津南町及び長野県栄村が孤立したように、地震、津波、豪雨に限らず大雪によっても孤立集落が発生する。
 このように、自然災害によって孤立した集落は、周辺とのアクセスが寸断されているため、集落全体の救出・救助・救援・復旧活動に支障が生じる。さらに、中山間地域においては人口減少や少子高齢化が進んでおり、孤立可能性のある集落においても、高齢化に伴い地域の防災力が低下していることが懸念される。
 したがって、自然災害によって孤立する可能性がある集落について、災害発生時における他の地域とのアクセスの確保を図るとともに、寸断された場合の対処方針も検討しておく必要がある。

 
図表I-2-3-11 自然災害によって孤立する可能性がある集落数

自然災害によって孤立する可能性がある集落数は、農業集落については、総数五万八千七百九十九集落のうち、29.7%、一万七千四百五十一集落あり、漁業集落については、総数六千二百四十六のうち、28.6%、千七百八十七集落ある。
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