第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

2 行政による事業者監視体制の強化と環境整備

(行政による事業者監視体制の強化)
 福知山線列車脱線事故を受けJR西日本が作成した「安全性向上計画」や、事業改善命令等に対する日本航空グループの改善措置報告によると、これらの事業者においては経営トップが現場の状況を把握しておらず、安全マネジメントが十分に機能していなかったという事実が判明している。これを踏まえ、事業者の安全確保に対する取組みをより確実にするため、これまでの現場中心・定点チェック中心であった行政手法の転換を図り、従来から実施してきた保安(安全)監査に加えて、事業者内における安全マネジメントの取組みについても、事業者の自主性、自己責任原則を基本としつつ、それを補完する形で「経営トップのコミットメントはあるか」、「プロセスとして機能しているか」等について行政による評価を行うなど、以下のような行政手法について検討・実施する必要がある。
・ 交通事業者における安全マネジメントを含む内部管理態勢の適切性を評価するプロセスチェック(安全マネジメント評価)を実施
・ 専門的・体系的な保安(安全)監査の充実・強化
・ 各輸送モードの特性に応じた実効あるインセンティブ等の導入
・ 安全監視要員の充実・強化、モード横断的な安全監視組織の設置等組織体制の強化
・ 外部の組織による第三者的チェック機能の活用

(事業者が事故防止に取り組むための環境整備)
 このような事業者監視体制の強化に加えて、事業者が事故防止に取り組むための環境を整備することも行政の果たすべき重要な役割である。具体的内容としては以下のような事項について検討・実施する必要がある。
・ 安全マネジメントに係るガイドラインの作成
・ 事業者における人材育成・教育研修に対する支援
・ 安全情報の収集・分析の強化とその結果に基づいた安全基準の見直し等予防的安全対策の実施
・ 航空・鉄道事故調査委員会の組織・体制の充実・強化等事故原因の究明の徹底と適時適切な情報の公表

 

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