第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

1 NPOや企業と連携した地域防災力の向上

 自然災害による被害を軽減するためには、地域住民がNPOや企業と連携して地域防災力を向上させることが重要である。地域防災力を向上させるためには、自らの身の安全は自らが守るという意識啓発を行う必要がある。

(自主防災組織による取組み)
 「共助」の例である自主防災組織は、地域住民が「自分たちの地域は自分たちで守ろう」という連帯感に基づき自主的に結成する組織であるが、地域によって結成状況に大きな差が見られる。自主的な防災活動を効果的かつ組織的に行うためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、NPO等と連携を図りながら災害時における情報の収集伝達や警戒避難体制の整備、大規模災害を想定しての防災訓練の積み重ね等を行う必要がある。

(企業における防災の取組み)
 企業においては、事務所・事業所の耐震化や風水害への備えを行うなど、「自助」による取組みを行うとともに、災害時に可能な限り短時間で重要な機能を再開するための事業継続計画(BCP)をあらかじめ策定しておくことが望まれる。最近では、ゼネコンやコンサルタント等もBCPの策定支援業務を行っており、こうした新規参入による策定支援の広がりが期待される。なお、経済活動のグローバル化の進展に伴い、海外に進出する企業が増加しており、BCPを策定する際には、国内の自然災害だけでなく、海外の自然災害をも想定しておくことが有効である。
 また、企業は「共助」として、防災について地域貢献を果たすことが重要である。このため、地域の防災を担う団体等との連絡・連携体制の強化を図るとともに、従業員の自主防災組織等への参加を促進するなど、地域の防災に積極的に貢献することが望まれる。
 さらに、耐震性に優れた建築物、防災機能が高い商品等を開発し、提供する企業情報を広く社会に伝える仕組み等を構築し、防災ビジネス市場を育成することが求められる。

(国における地域防災力強化に向けた支援)
 防災NPOや防災ボランティアのネットワーク化を図り、自主防災組織等の先進的な取組みを紹介するなど、国も地域の防災力が高まるよう積極的に支援を行う必要がある。

 以上のことから、個人レベルでは「自助」に取り組むとともに、「共助」として、自治会、商店街、PTA、NPO、企業等が連携し、主体的に対策を講じることにより、地域防災力を高めることが重要である。また、そのためには、可能な限り平常時の取組みとして防災を定着させる必要がある。

 

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