第II部 国土交通行政の動向 

3 海事産業の動向

(1)海上輸送産業の動向

1)外航海運の動向
 我が国の貿易量の99%以上を占める外航海運は、輸送量が増加基調にある上、近年は中国を中心とした荷動きの活発化等により市況が好調に推移したこと等から空前の好況期にある。
 我が国では、貿易物資の安定的輸送等の観点から日本籍船及び日本人船員の維持・確保を図るため、平成8年に創設された国際船舶制度(注1)(平成16年7月1日現在、国際船舶数は91隻)により、税制上の優遇措置、外国人船員承認制度(注2)(平成17年10月末現在、外国人承認船員数は2,180人)の導入等の支援措置を講じている。

 
図表II-5-4-5 我が国の貿易量と外航海運輸送量の推移

近年は、市況が好調に推移したこと等から空前の好況期にある。平成16年の我が国の貿易量は、約9億5千万トンであり、うち海運での輸送量は約9億4千万トンである。海運比率は、99.7%となっている。
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2)国内旅客船事業等の動向
 国内旅客船事業は、近年の景気低迷、陸上交通やRORO船等の内航海運事業者との競争から厳しい経営環境にあり、約5割の航路が赤字である。輸送実績において大きな割合を占める長距離フェリーを見ると、平成16年度の自動車航送台数は前年度を上回ったが、旅客輸送人員は前年度を下回った。経営状況についても、12社中3社が経常赤字であり、12社合計でも経常赤字が近年続いている。

 
図表II-5-4-6 長距離フェリー航路輸送実績の推移

平成16年度の長距離フェリー航路の輸送実績は、自動車航送台数241万台、自動車航送台キロ14億9千万台キロ、旅客輸送人員339万人、旅客輸送人キロ17億6千万人キロとなっており、近年、横ばい傾向が続いている。
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3)内航海運の動向と活性化策
(ア)輸送の動向
 内航海運の輸送動向をみると、平成16年度については、対前年度比0.3%増である。
 
図表II-5-4-7 内航海運輸送量

内航海運輸送量は、平成10年度で2270億トンキロ、平成13年度で2445億トンキロ、平成16年度で2188億トンキロと推移している。
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(イ)内航海運暫定措置事業の円滑な実施
 内航海運の活性化を図るため、スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業を解消し、保有船舶を解撤(かいてつ)(解体し、撤去すること)等した者に対して一定の交付金を交付するとともに、船舶建造者から納付金を納めさせること等を内容とする内航海運暫定措置事業を実施している。これにより、市場原理と自己責任の下、事業意欲のある事業者のより自由な船舶の建造が可能となっている。国土交通省としては同事業に要する資金調達の一部について政府保証を行い、円滑かつ着実な実施を支援している。

(ウ)内航海運活性化策
 意欲ある事業者の事業展開の多様化・円滑化及び新規参入を促し、競争の促進による内航海運の活性化を図るため、参入規制の許可制から登録制への緩和、輸送の安全を確保するための運航管理制度の導入等を内容とする「内航海運業法」の改正が行われ、平成17年4月より施行された。
 また、内航海運は老朽船舶が増加傾向にあり、物流効率化、環境対策等の各種要請に応えるため、船舶の代替建造を促進することが必要不可欠である。そのため、インセンティブ付与等政府による支援を総合的に講じていくことが必要となっている。

4)港湾運送事業の動向
 港湾運送事業は海上輸送と陸上輸送の結節点として重要な役割を果たしており、平成16年度の全国の港湾運送量は約13億4,300万トン(対前年度比4.9%増)であった。また、事業の効率化や多様なサービスの提供を図る観点から、主要9港以外の地方港においても、主要9港と同様に事業参入を許可制に、運賃・料金を事前届出制とする規制緩和を実施するため、「港湾運送事業法」の改正が行われ(平成18年5月までに施行予定)、これにより、港湾運送事業の規制緩和が全国へ拡大することとなる。


(注1)日本籍船のうち安定的な国際海上輸送の確保上重要な船舶を国際船舶と位置付け、各種の支援措置を行う制度
(注2)STCW条約(船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)の締約国が発給した資格証明書を受有する外国人船員を、国土交通大臣の承認により、日本籍船の船舶職員として受け入れる制度(対象国:フィリピン、トルコ、ベトナム、インドネシア、インド、マレーシア)

 

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