第II部 国土交通行政の動向 

8 建設産業の再生

(1)建設産業の現状と経営革新等の促進

 建設業は、国民生活の質の向上及び国民経済の発展の基盤である住宅・社会資本整備の直接の担い手であるとともに、国内総生産・全就業者数の約1割を占める重要産業の一つであるほか、特に地方部において多くの就業機会を提供することにより、雇用の確保に大きく寄与するなど、地域経済においても大きな比重を占めている。建設投資を見ると、平成17年度の見通しは約51.3兆円で、ピークであった4年度(約84.0兆円)と比べると約4割減少している。一方、建設業者数(許可業者数)を見ると、17年3月末は562,661業者で、5年3月末(530,655業者)と比べると6.0%増加している。このように、建設業は、深刻な過剰供給構造となっており、受注の減少、利益率の低下により厳しい経営環境が続いている。
 加えて、産業全体では収益力の回復が着実に進んでいるにもかかわらず、建設業は過当競争の影響から収益力が引続き低迷しており、平成16年度の売上高営業利益率及び同経常利益率は、それぞれ1.7%、1.8%と、4年度(3.8%、3.2%)の約半分の水準にとどまっているほか、16年度の全産業の平均(3.1%、3.1%)を大きく下回っている。

 
図表II-5-4-14 建設投資(名目値)、許可業者数及び就業者数の推移

平成17年の建設投資見通しの名目値は、民間投資額が前年より0.5兆円増加し、32兆円、政府投資額は前年より1.1兆円減少し、19.3兆円となった。また、平成16年度末の許可業者数は56万3千業社、平成17年平均の就業者数は568万人となり、就業者数は8年連続の減少となった。
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 こうした中、大手ゼネコン等については、金融機関の不良債権処理が加速する中で過剰債務の処理や経営合理化を迫られ、法的整理に移行し、あるいは合併、持株会社化等の経営統合に向かうなどの再編の動きが既に進行している。一方、比較的公共工事への依存度の高い中小・中堅建設業は、公共投資の減少が続く中、業者数は横ばいが続き、完成工事高や利益率は低水準で推移しており、再編・淘汰が避けられない状況となっている。
 
図表II-5-4-15 建設業の利益率の推移

建設業の利益率の推移は、平成3年度に、営業利益率が4%、経常利益率が3.4%だったのが、平成16年度には、営業利益率が1.7%、経常利益率が1.8%になっている。
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 中小・中堅建設業は、立ち遅れている地域の社会資本整備の担い手であるだけでなく、多くの就業機会を提供するなど、地域の基幹産業として経済・社会の発展に欠かすことの出来ない役割を担っている。また、災害時には、その被害を最小限にとどめるとともに早期復旧を図る上で、地元業者の迅速な対応が不可欠である。このように、地域再生の観点からも中小・中堅建設業の再生を図ることは喫緊の課題である。
 中小・中堅建設業の再生を図るためには、過剰供給構造を是正し、その過程において技術と経営に優れた企業が生き残り、伸びることができる環境整備を進めることが必要である。
 このため、従来から入札・契約制度の改革を通じて、不良・不適格業者の排除の徹底やダンピング受注の防止などを図り、公正な競争環境を整備するとともに、合併や協業組合の設立等の経営統合、これまで培ってきた技術とノウハウを活かした農業・福祉・環境等の新分野への進出等、経営革新の取組みを促進している。
 平成17年度においては、「建設業の新分野進出促進支援」を政策群(注)として位置付けており、新分野進出のための情報提供、経営診断、計画策定支援など関連するサービスを1ヶ所でまとめて受けることができる「ワンストップサービスセンター」を各都道府県に設置し、関係省庁が連携して支援している。あわせて、「地域における中小・中堅建設業の新分野進出/経営統合等促進モデル構築支援事業」において、先導的な経営革新の取組みをモデルとして取上げ支援するとともに、普及・促進を行っている。
 また、こうした経営革新促進施策の展開と合わせて、中小・中堅建設業の資金繰り悪化の防止等を図るとともに、労働移動の円滑化等の促進について、厚生労働省や建設業団体と連携し、セーフティネット(安全網)の確立に向けて取り組んでいる。


(注)民間の潜在力を最大限に引き出すため、府省の枠を超えた連携の下、規制改革、民間の資金・ノウハウの活用、新事業創造等の政策と予算を組み合わせる手法

 

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