第II部 国土交通行政の動向 

(5)地震・火山活動等の監視体制の充実

1)気象庁における取組み
(ア)地震・津波対策
 地震・津波による災害の防止・軽減を図るため、全国に地震計や震度計を整備するとともに、最新のIT技術を活用した地震津波等を監視するシステムを導入することにより、地震活動を24時間監視し、地震・津波情報の提供、津波注意報・警報の発表等を行っている。また、迅速かつ確実な情報伝達について関係機関との連携を図っている。
1)東海地震、東南海・南海地震への取組み
 東海地震・東南海地震の想定震源域にケーブル式海底地震計を整備するため、海底地震計の製作等に着手した。また、気象研究所では、東海地震の予測及び東南海・南海地震に対する観測業務に役立てるため、地殻活動予測シミュレーションの対象範囲を南海トラフとその周辺域に拡大するとともに、同地域の地殻活動の観測・解析手法の向上を図るための研究を行っている。
2)緊急地震速報の提供に向けた取組み
 地震発生直後から大きな地震動が到達する前に揺れの大きさ等を予測して伝える「緊急地震速報」を関係機関との連携の下、試験的に運用している。平成17年度は、「緊急地震速報」に対応した地震計の整備を完了するとともに、「緊急地震速報」の本運用に係る検討会を開催した。
(イ)火山対策
 全国4箇所の「火山監視・情報センター」では、火山活動が活発な20火山を常時監視するとともに、火山機動観測班がその他の火山についても調査観測を実施し、関係機関のデータを含めた各種観測データの集中的な監視結果に基づき、火山に関する総合的な情報を提供している。火山活動に異常が見られた場合には、火山機動観測班を緊急に派遣し監視体制の強化を図るほか、関係機関とのデータの共有化や航空機による上空からの火山活動状況の把握等により情報の収集を進め、総合的な判断を行い、火山情報の迅速かつ的確な発表に努めている。
 また、火山情報を防災機関等が利用しやすくするため、火山ごとに設定した6段階(0〜5)の火山活動度レベルを付加した火山情報を提供している(平成17年度現在12火山)。

2)海上保安庁における取組み
(ア)海底地殻変動等の監視
 これまで、日本海溝、相模トラフ及び南海トラフ周辺に海底基準局を設置し、巨大地震の震源となる可能性のある海底プレート境界付近の地殻変動を観測している。平成16年には、それまでの観測の結果から宮城県沖(日本海溝陸側)における海底の地殻の移動(西北西に年間約8cm)を検出し、また、17年8月に発生した宮城県沖を震源とする地震の前後に震源付近の海底基準局を観測・解析した結果、地震に伴う海底の地殻の移動(東北東に約10cm)を検出した。さらに、地震及び火山噴火の予知に資するため、南関東の離島にGPS(全地球測位システム)受信機を設置し、島しょ等の動きを監視している。

 
図表II-6-1-21 海底地殻変動観測概要

GPS衛星からの電波を用いた測位技術と海中の距離を音波で測る技術を用いて、海底地殻変動を長期にわたって繰り返し観測してきており、平成16年には、それまでの観測の結果から宮城県沖の海底の地殻が年間約8センチ、せいほくせいに移動していることが判明した。引き続き、安定した観測精度が得られるように、技術レベルの向上を図りつつ観測を行っていく。

(イ)海底火山噴火に係る観測等
 海底火山の噴火の前兆として周辺海域に認められる変色水や音の発生等の現象を事前に把握し、一般航行船舶に情報を提供している。また、海底火山噴火予知の基礎資料とするため、海域火山基礎情報の整備及び総合的な調査を行っている。

3)国土地理院における取組み
(ア)地殻変動観測・監視体制の強化
 全国の電子基準点を1,231点に増設し、国土の監視や情報把握の即時化を図るとともに、GPS連続観測・監視に努めている。
 平成17年3月の福岡県西方沖を震源とする地震では、最大17cmの水平地殻変動を検出したほか、8月の宮城県沖を震源とする地震等において、地震に伴う地殻変動を検出している。また、13年春頃から東海地域西部で通常と異なる地殻変動が観測されており、現在においてもその傾向は継続している。このほか、房総半島や火山周辺等で、従来の地殻変動検出手法ではとらえられなかったゆっくりとした地殻変動等が観測されている。

 
図表II-6-1-22 GPS連続観測がとらえた日本列島の動き

新潟県上越市(旧大潟町)の電子基準点を固定した、2004年12月から2005年12月までの1年間の地殻変動量である。ベクトルは各点の変動量と方向を表している。日本列島はよっつのプレート(北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピンかいプレート、太平洋プレート)がぶつかり合う場所にあるため、複雑な地殻変動が見られる。なお、この地殻変動の中には、平成17年3月の福岡県せいほう沖の地震、8月の宮城県沖の地震等による地殻変動が含まれる。

(イ)地震、火山噴火等災害をもたらす現象に関する研究及び会議の運営
 GPS、合成開口レーダー(SAR)及び航空機レーザー測量等による観測成果から、地震・火山噴火の発生メカニズム等を明らかにしている。また、GIS等を利用した解析システムを活用し、地形変化による自然災害の軽減に資する研究を行っている。
 また、地震予知研究に役立てるため、関係行政機関・大学等と連携し、総合的な検討を行う地震予知連絡会や、各省庁や公共機関等が設置している潮位観測施設の潮位記録から検出した地殻活動を公表する海岸昇降検知センターの運営を行っている。

 

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