第II部 国土交通行政の動向 

(1)船舶の安全性の向上及び船舶航行の安全確保

1)船舶の安全性の向上
 船舶の安全に関しては、国際海事機関(IMO)を中心に国際的な基準が定められており、平成17年7月(一部は18年7月)のSOLAS条約(注1)の改正に伴い、航海機器に関する技術要件等についての国内法令の改正を行った。また、18年7月(一部は19年1月)にSOLAS条約が改正されるため、ばら積み貨物船や救命設備に関する技術要件等についての国内法令の改正に取り組んでいる。また、技術的な規制の効果を客観的に評価する「船舶の総合的安全評価」を実施している。
 さらに、サブスタンダード船(注2)の排除のため、ポートステートコントロール(PSC)(注3)を厳格に実施しており、平成17年5月及び9月に新潟港へ入港した万景峰92号に対するPSCは社会的にも関心を集めた。
 このほか、平成13年度から4箇年にわたり研究開発を実施した、ITを活用して船舶の推進機関等の状態を陸上から遠隔監視・診断する「高度船舶安全管理システム」の実用化・普及に向けた環境整備に取り組んでいる。

2)船舶航行の安全確保
 船舶の高速化等海上交通環境の変化に対応し、船舶航行の安全を確保するため、既存航路の拡幅・増深及び水深の維持、船舶自動識別装置(AIS)を活用した次世代型航行支援システムの整備等を行うとともに、平成17年度には、老朽化した航路標識施設及び機器の更新等の改良・改修を487箇所、避難港の整備を下田港等6港で実施している。また、外国人の運航する船舶の海難防止対策の一環として英語版の海図及び水路誌等を刊行し、水路図誌の充実を図っている。
 事故原因の大半を占めるヒューマンエラーの防止対策としては、各種航行支援装置から得られる情報とブリッジ(船橋)から見た海上の景観情報を統合・処理し、一元的に表示する「先進安全航行支援システム(INT-NAV)」の調査研究を平成17年度より開始している。また、旅客船事業者及び内航運送業者については、運航管理制度(運航管理規程の届出及び運航管理者の選任の義務付け)により、輸送の安全確保を図っている。
 水先制度については、水先人供給源不足、港湾の国際競争力の向上、船舶交通の安全確保及び海洋環境の保全への要請の高まり等の中で、その抜本的な改革が求められている。このため、水先人の養成・確保、船舶交通の安全確保、水先業務運営の効率化・適確化等を内容とする「海上物流の基盤強化のための港湾法等の一部を改正する法律案」を第164回国会に提出した。
 さらに、マラッカ・シンガポール海峡における航行安全対策は、利用国として我が国だけが民間団体を通じ沿岸国への協力を実施している。一方、航行安全等の強化のための協力枠組みの構築を目的として、平成17年9月にIMO主催のジャカルタ会議が開催され、沿岸国と利用国の国際的協力に関する枠組みづくりに向けた定期的な議論の場の設置について合意された。今後我が国は、議論の場に積極的に参加し、具体的協力策について関係国と共に検討していくこととしている。


(注1)海上における人命の安全のための国際条約
(注2)海上安全・海洋環境保全に関する条約等の基準を満たさない船舶
(注3)寄港国による外国船舶の監督

 

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