第II部 国土交通行政の動向 

(2)自動車の総合的な安全対策

1)今後の車両安全対策の検討
 平成17年10月、交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会内に「技術安全ワーキンググループ」を設置した。同ワーキンググループでは、今後の車両安全対策のあり方について審議されており、18年5月頃に報告書が取りまとめられる予定である。

2)保安基準の拡充・強化
 自動車との衝突の際に歩行者の頭部が受ける衝撃を少なくして死者数を減らすための歩行者頭部保護基準、シートベルトをせずに走行を開始した場合に音による再警報を行う装置(シートベルト・リマインダー)を運転者席へ義務付ける基準を平成17年9月から段階的に適用している。また、固定機能付きチャイルドシート、乗用車の中央席三点シートベルト化、大型トラックの前部プロテクター等についての基準化作業を進めている。

3)自動車アセスメントによる安全情報の提供
 自動車とチャイルドシートに対する安全性能評価結果を公表し、安全な自動車等の選択や製作者のより安全な自動車の開発を促進している。平成12年度から16年度の間に自動車112車種、チャイルドシート41機種の評価結果を提供することにより、自動車等の安全性能の向上に貢献している。

 
図表II-6-2-9 自動車アセスメントによる効果

自動車アセスメントによる情報提供によって、エアバッグ、アンチロックブレーキシステムの装備率が上昇することで、自動車の衝突安全性能は確実に向上している。平成7年末のエアバッグの装備率について運転者席及び助手席がそれぞれ3割と1割程度であったのに対し、平成15年末にはともに10割近くになっている。また、頭部傷害値の改善状況については、平成7年度公表時点と16年度公表時点を比較すると、運転席については4割以上、助手席については5割程度改善している。胸部傷害値の改善状況については、改善率は2割程度上昇している。
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4)先進安全自動車(ASV)の開発・普及の促進
 先進安全自動車(ASV)の開発・普及を促進すべく産・学・官の協力体制で検討を進めており、これまでの取組みによって、被害軽減ブレーキ等世界に先駆けた技術が実用化されるなど、着実に成果が上がっている。

5)リコールに係る不正行為再発防止対策の推進及び認証制度の厳格化
 自動車メーカーによる悪質なリコール隠し問題等を踏まえ、監査の強化、情報収集の強化及び技術的検証体制の構築の3つを柱とするリコールに係る不正行為の再発防止対策を平成16年にまとめ、リコール制度の着実な実施に努めている。さらに、技術的検証体制の強化等を図るため、独立行政法人交通安全環境研究所において実車実験等により自動車の欠陥の原因を検証することとしている。
 また、型式認証においても制度改正を行い、リコールに関する不正行為を行った自動車メーカー等から型式認証の申請があった場合には、1)保安基準適合審査の厳格化、2)不正行為への対応状況等の確認を行うなどの審査の厳格化を図っている。

6)事業用自動車の安全対策
 事業用自動車の交通事故件数は、年間約6万3千件(平成16年)であり、事業用自動車に係る交通事故防止は緊急の課題となっている。このため、自動車運送事業者に対する監査体制の充実・強化策として、新規参入事業者への早期監査等事故の未然防止対策や、行政処分を行った事業者に対する改善状況の確認を行うなど効率的な監査を実施するとともに、必要な監査要員の増員や監査担当官に対する研修の充実を図る。また、ヒューマンエラー事故防止対策を含む一層の安全対策の強化を図るため、自動車運送事業者に対し安全マネジメントの導入等を検討していく。

7)不正改造車の排除
 不正改造車を撲滅するため、年間を通して「不正改造車を排除する運動」を実施しており、平成17年6月の「不正改造車排除強化月間」には、警察等の協力を得て全国で185回の街頭検査を行い、不正改造車等760台に対して整備命令を発令した。

 

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